メディアのがん治療への影響④ | がん治療の虚実

メディアのがん治療への影響④


ドラッグラグという言葉が最近良く報道される。諸外国につかえる抗がん剤がなぜ、日本だけ使えないのかという問題だ。簡単にいうと有望な新規抗がん剤は海外で開発され、日本では認可が遅れるので治療法の尽きたがん患者さんは諦めるか、月に数十万もする個人輸入をしなければならないというものだ。大体行政の怠慢とかシステムが悪いとされる事が多いが事はそう単純ではない。あまり言及されていないが次の大きな事実は認識しておくべきだ。
・マスコミは自らの使命としてコトの問題点だけをあげつらう習性がある。海外にくらべてこんなところが日本の問題だとよくいうが、日本の方が優れているところは敢えて無視している、もしくは比較しようとしない。日本の医療はこんなにいいんだと言ってもインパクトがないからかもしれない。

新しい抗がん剤である分子標的薬は月50万円以上かかるといっても日本の場合高額医療制度があるから月最高約75000円以上はかからない。数ヶ月たてば50000円以下になる。さらに生活保護になれは医療費は無料となる。
アメリカでは7人に一人は無保険で抗がん剤治療は2ヶ月で200万円以上になるから破産する。フードチケットの配布はあっても生活保護は聞いた事ないからどうしても治療したければ製薬企業の勧める新薬の無償治験に参加しなければならないし、関連するCT検査などは自費だ。
ある大統領報道官は大腸がんになり治療費を稼ぐ必要があるからと昔やってたニュースキャスターに復帰すると報道されていた。
言い換えると海外で新薬が急速に開発されるのは治験、臨床試験に参加しないと目玉が飛び出るような費用がかかり参加せざるを得ないからなのだ。むしろ条件を満たして参加できる人はまだマシという現実をマスコミは報道しない。
そんな事実を知らないと日本の開発当事者が怠慢だから救える命が救えないと理不尽な怒りがこみ上げて皆不幸になってしまう。以前にも記載したが、イギリスでは腎不全で透析になったら月数十万円の透析費は自費となる。払えなければ人生諦めるしかないし、胆のうがんでは臨床試験に参加しなければ痛み止めだけの緩和療法を選択するしかないのだ。
結論としては新薬が使えないドラッグラグがあっても日本で治療を受けられる環境の方がマシなケースの方がずっと多いのだ。