宮崎タケシ公式ブログ

宮崎タケシ公式ブログ

「三ツ星議員」受彰 元衆議院議員 宮崎タケシのブログです

議席を失って4年余り。本日誕生日を迎え、52歳になりました。

 

『三国志』の劉備は、雌雄を争って曹操に敗れて劉表の下に逃げ込むこと8年、騎馬で鍛えた自分の太腿のぜい肉を見て、「なんということだ。 力を発揮する機会も得られず、これほど長く日々をむなしく過ごしてしまったとは」と嘆きました。

 

これが「髀肉の嘆をかこつ」の故事ですが、まさに私も同様の心境です。今後、世の中のお役に立てる機会に恵まれるだろうか、と感じる日々です。

 

さて、この機会に、前橋の市街地再開発についての考えをまとめた論考を掲載します。

私への誕生日プレゼントか、バレンタインチョコの代わりと思って、どうかご一読ください(笑)

(5千字を超える長文ですが、誕生日に免じてお許しください)

 

***

『駐車場問題は本当に乗り越えられるのか―前橋中心市街地の再開発計画』

 

 (上・前橋の駐車場マップ、下・高崎の駐車場マップ)

 

前橋市の中心市街地再開発(千代田町中心拠点地区市街地再開発事業)の都市計画決定に向けて先日行われた説明会に、私も出席しました。計画では、中心市街地を訪れる人数が大幅に増える一方で、駐車場の台数が現在より50台ほど減ることになることから、出席者からは「本当に大丈夫なのか」「商店街にマイナスの影響が出るのではないのか」と懸念の声が相次ぎました。

 

市側の説明は「再開発地区の外にも駐車場があるので大丈夫」というものでしたが、これに対して、私自身も以下の様な意見を述べさせていただきました。

 

◆駐車場が減る再開発で大丈夫?

 

「現在も中心市街地ではコインパーキングや月極駐車場が増加傾向にあります。増えているのはニーズがあるからです。再開発で街を訪れる人が増えれば、さらに駐車場が不足するでしょう。もちろん再開発地区の外にも駐車場はあります。しかし、街中に駐車場が野放図に増えて虫食い状態になったら、街全体にとってはむしろマイナスです。再開発単体ではなく街全体としてプラスになるように考えていただくようお願いします」

 

この中心市街地の駐車場問題について、もう少し掘り下げて具体的に考えてみたいと思います。長文になりますが、お付き合いください。

 

◆スズランと図書館を移転、オフィスビルとマンションを新設

 

まず、再開発計画の概要から。これは、前橋市千代田町二丁目4番街区(スズラン別館がある区画)、同8番街区(中央駐車場や中央イベント広場がある区画)、同11番街区(スズラン新館のある区画の一部)、同四丁目7番街区(スズラン本館の区画)を一体的に開発しようというものです。全体で2・7ヘクタール、8千坪くらいです。

 

中央通りを挟んで西側が第一期の西街区(4、8番)。

・オフィス   10,000平米

・商業施設   20,000平米(スズランの移転を予定)

・地下駐車場約 100台、バスターミナル、広場

 

中央通りの東側が第二期の東街区(11番、7番)。

・教育文化施設 12,000平米(移転される中央図書館と専門学校)

・マンション  80戸(80台分の機械式立体駐車場を備える)

 

 以上のような計画です。なお、この場所の容積率規制は600%。つまり、延べ床面積が敷地の6倍までの建物が作れます。16万平米くらいまで可能なことになりますが、実際はその半分の規模、延べ床面積8万平米程度とする計画です。

 

 この再開発地区には現在、中央駐車場、第1駐車場など約230台分の駐車場が存在しています。再開発計画では、これが約100台分に減ります。ただし、マンションに住民用の機械式駐車場が80台分設けられるため、差し引きの減少幅は50台分となります。街を訪れる人が大幅に増える計画なのに、最も便利な現中央駐車場付近から50台分減ることになるので、商店街の皆さんや地域住民から「これで本当に大丈夫か」という不安の声が上がることになったわけです。

 

◆中心街に着々と駐車場を整備する高崎市

 

まず、2017年にイオングループの都市型ショッピングセンター「高崎OPA」がオープンした、高崎と比較してみましょう。参考のため、高崎市の中心部の地図を添付します。地図には主な駐車場(基本的に100台以上)が記入してあります。★マークは人が集まる主な施設です。

 

OPAは延べ床面積41,727平米で、前橋の再開発で予定されている商業施設の約2倍強の規模です。OPAの開設にあたり、駐車台数485台のココウエストが新設されました。OPAとココウエストは空中廊下で直結されています。

 

高崎駅西口にはOPA、高島屋、高崎駅ビル(モントレー等)という3つの集客施設があります。これらはペデストリアンデッキで結ばれ、信号待ちなしに行き来できます。「直結」と呼べるような駐車場は、西口だけで約2250台に及び、駅を挟んでシームレスにつながっている東口の分を含めると約4500台にも達します。

 

また、駅からやや離れて高崎スズランがありますが、駐車場の第一選択となるパーク500の駐車台数は479台です。なお、近隣には2011年に完成した中央図書館・総合保健センターがありますが、ここにも400台の専用駐車場が設置されています。

 

高崎の中心市街地は「新幹線の停車駅」に目が行きがちですが、マイカー利用者を意識して莫大なキャパシティの駐車場が計画的に整備されてきたことが分かると思います。(もちろん駅利用者が使う駐車場も多いですが、電車で街に来る人が多いことで駐車場が少なくて済むのも確かで、両面から見る必要があります)

 

◆前橋の駐車場は高崎の四分の一?

 

 それでは、前橋の地図を見て見ましょう。縮尺は揃っているはずですが、高崎に比べて大型駐車場が少ないことが一見して理解できると思います。中心商店街の周辺の大型駐車場は、合わせても約1700台程度に過ぎません。広瀬川沿いの城東パーキング415台はやや遠い上に、信号待ちもあります。パーク千代田200台も国道17号の反対側です。いずれも中心商店街の利用者にとって、それほど使い勝手が良いとはいえません。

 

 高崎は同じような範囲内に5800台~6700台程度の駐車場があります。前橋の3・5倍から4倍くらいということです。前橋の場合、駅周辺を含めても2500~2600台くらいしかなく、高崎の半分に満たない状況です。もちろん、コインパーキングや月極駐車場など民間の小型駐車場もありますが、それは高崎も同様でしょう。

 

 再開発によって、この状況からさらに、しかも最も利便性の高い中央駐車場が担ってきた50台分が減ることになるのです。

 

◆オフィス向けにも駐車場は必要

 

 次に、需要の方を考えてみましょう。再開発によって、駐車場のニーズはどの程度増えるでしょうか?以下に試算してみます。まず西街区。

 

・オフィス10,000平米 → 700台(新規)

レンタブル比(貸床比率)を7割とすると、エントランスやエレベーターホール等の共有部分を除くオフィス部分は、7,000平米となります。オフィスの適正面積は一般的に1人あたり3坪(≒10平米)と言われるので、ざっと700人が働くことになります。公共交通機関で通勤する人もいるにせよ、マイカー通勤を選ぶ人も多く、社用車や営業車も一定数必要でしょう。

そこで、オフィス関連で近隣に生まれる駐車場ニーズを700台と試算しました。

 

・商業施設20,000平米 → 150台(増加)

スズランの床面積は、移転に伴って大幅に縮小されます。一方で、最新式の店舗になるために面積あたりの来客数や売上は大幅な伸びが期待されます。県内の各ショッピングセンターが確保している駐車場の台数を目安にすると、移転後のスズラン単体で650台程度が必要となります。もちろん現在も駐車場は確保されていますが、150台程度は増やしたいところではないでしょうか。

 

◆新たに1090台もの需要が発生か

 

・教育文化施設12,000平米 → 200台(新規)

図書館と専門学校の面積比率がどの程度かは分かりませんが、他市の最近の例を考えて図書館を5,000平米、残り7,000平米を専門学校と仮定してみます。

 

現在の中央図書館は47台の専用駐車場があり、満車なら市役所駐車場も利用できます。図書館利用者のピークは休日ですが、市役所は閉庁なので融通が利くわけです。また、先述した高崎市中央図書館は保健センターと共用で400台分の駐車場を備えています。他市の事例だと、最近は床面積5,000平米前後の図書館を新設する場合は、100台程度の駐車場を整備するケースが多いようです。そこで、図書館の需要を100台と仮定します。

 

専門学校の必要面積は学科等によっても異なると思いますが、たとえば看護学校などでは学生1人あたり床面積25平米程度が一般的なようです。すると、学生数は280人となります。専門学校生は免許が取れる年齢なのでマイカー通学もあるでしょう。3分の1がマイカーを使うとすれば90台強となります。講師や学校職員の分も含めると100台程度は確保したいところではないでしょうか。

 

図書館と専門学校を合わせて、計200台のニーズが生じることになります。

 

・マンション80戸 → 40台(新規)

11台の機械式立体駐車場が整備されるそうです。現在のスズラン本館南側付近に機械式駐車場を作るようですが、車両通行に制限が多いエリアなので出入りには不安が残ります。それを脇に置いても群馬県の1世帯あたり車両保有台数は平均209台で、1世帯1台で足りるとは考えにくい気がします。まちなか居住を望む層なので平均より保有台数が少ないと考え、1戸につき1・5台としても40台分が不足することになります。

 

以上のように計算すると、再開発によって新たに生まれる駐車場ニーズは、

・オフィス  700台

・商業    150台

・教育文化  200台

・マンション  40台

の計1090台という計算になります。公表されていない資料が多いため少々乱暴な計算にはなってしまいますが、大筋の傾向はこのようなところではないでしょうか。

 

◆公共交通やコインパーキングでは解決できない

これまでの計算を振り返ってみましょう。

再開発地区の中で駐車場が50台分減り、一方で駐車場ニーズが1090台分増える。差し引き1140台分が現在より不足する、ということになります。このような状況では、中心市街地の利便性が低下することになり、活性化に繋がらないのではないか、というのが私の疑問です。

 

これに対しては、次のような反論が出るかも知れません。それに対する考え方をあらかじめ述べておきます。

 

① 再開発地区にはバスターミナルが設けられる。公共交通機関の利用が増えることで、駐車場のニーズは減る。

  ➡ バスターミナルが整備されれば、「近くにマイカーを駐めてバスに乗る」という人のための駐車場も必要になる。群馬のマイカー文化が一朝一夕に変わるわけもなく、中心市街地の活性化にはマイカーの利便性を強く意識する必要がある。

 

② (やや離れた)城東パーキングなどには余裕もある。また、民間のコインパーキングもあるので、駐車場は足りる。

  ➡ 小規模なコインパーキングや月極駐車場が年々増えているのは、駐車場のニーズがあるから。離れた駐車場に余裕があっても、それは不便だから使われないのであって、より便利な場所にコインパーキングがあったらそちらに流れてしまう。小型駐車場が虫食い的に増えるのは、中心市街地の効率的な土地利用を妨げて街全体にとってマイナスになる。逆に大型駐車場に誘導する努力をすべき。

 

③ 立体駐車場を建設しても、採算が取れるかどうかわからない

  ➡ 駐車場ニーズの変化を、事前にはっきり予測することは困難ではあるが、現在の再開発計画では駐車場が不足するのは明らか。利用状況の推移を見ながら状況によって一部を月極駐車場に転換するなど、リスクを最小化する方法はあるはず。

 

◆ 容積率の活用で駐車場不足は解消できる!

 

 ここまで読んでいただければ、前橋中心市街地の再開発にあたって、駐車場問題がいかに重要であるかについて、ご理解いただけたと思います。

 

最後に、なぜこのような駐車場不足を招く計画になってしまったのか、考えてみたいと思います。おそらくは「容積率600%なのに、半分の300%までしか使わない」という選択をしたことが、根本にあるのではないかと思います。

 

なぜ容積率を最大限活用しない計画にしたのか、その理由は良く分かりませんが、想像するに

① 全体の事業費を圧縮するため計画の規模を小さくした

② 借り手が見つからないことを危惧して、あらかじめ延べ床面積を減らした

② 日照や景観に関する配慮

 あたりではないかと思います。

 

しかし、「魅力ある都市には十分な密度が必要である」というのは、現代的な都市政策の元祖とも言えるジェイン・ジェイコブズが唱えた最重要なテーゼです。郊外ならともかく、街のど真ん中においては、可能な限り容積率を活用して都市の密度を活用していくことが、必要ではないかと考えます。

 

 ①についていえば、この再開発は公的な事業ではあっても基本的には営利事業なのですから、採算が成り立つなら事業費が大きくても問題はありません。再開発に投じられる資金は、あくまで「投資」であり、長期的に回収できることが前提です。

 

 ②については、例えばこれが「商業施設だけの再開発」であるなら、理解できる手法かもしれません。しかし、今回は専門学校やマンションまで含めた「職・住・商・学・公」一体型の総合開発なので、何らかの形で借り手・買い手は見つかるはずです。中心部のマンション需要はまだ活発だし、老朽化した公営住宅を移転することも考えられます。「職住商」一体のまちづくりは最新の潮流でもあります。

 

 ③については、まさに哲学の問題ではあるのですが、なにはともあれ中心市街地に「にぎわいと活気を取り戻す」という目標を達成することが第一です。「街の魅力とは密度と多様性である」というジェイコブズの考え方を、私たちはもう一度噛みしめるべきではないか、と思います。

 

◆前橋最大のネック「密度の低さ」を乗り越えよう

 

 結論として、私の提案は(1)容積率600%を十分活用し、再開発で生み出す床面積を広げること(2)(高崎のように)1000台規模の立体駐車場を設置してニーズを吸収し、必要に応じて月極駐車場としても活用すること(3)床面積をマンションなど居住系に多く割り当て、場合によっては公営住宅的な機能を持たせること―等です。

 

 もちろん個人的な趣味でいえば、もっとやってほしいこと、ほしい施設、魅力的な使い方は色々とあるのですが、純粋なハード面でいえば上記3点が根幹だと思います。全国各地の県庁所在地や中核市と比較して、前橋市が「市中心部の人口密度の異様な低さ」において際立っていることは、あまり知られていません。しかし、これが根本的な課題です。

 

なんと、5,000字を超える長文となってしまいました。お読みいただいて、ありがとうございました。私の先祖が殿様に付き添って前橋に移り住んできてから、150年を超えました。子供の頃にあれだけ活気があった街が衰退していくのは、とても悲しいものです。中心市街地の再開発が成功し、前橋が活気を取り戻すことを心から願っています。          (了)