後追い松山旅行記 松山市郊外・三津編
後追い松山旅行記です。松山城→道後温泉と松山市中心部の紹介が続きましたが、今回は中心部を少し離れて、
松山市内郊外にある三津でまとめたいと思います。港町であり、レトロな雰囲気の残る、散策にお勧めのエリアです。
現在では、松山を発着するフェリーの旅客ターミナルは三津浜のさらに先にある高浜港となっていますが、
明治になり岸壁に直接着岸できる高浜港が出来るまで、松山における海の玄関口はここ三津浜が担っていました。
古くは菅原道真が大宰府に流される途中に寄った伝承から、10代にして江戸へ遊学に出た正岡子規が出立したのも、
子規の親友でもあり『ぼっちゃん』で有名な夏目漱石が松山赴任のために降り立ったのも、この三津浜だったのです。
とはいえ旅客船の着岸港としての設備もなく、本船まで艀(小舟)で乗り移らなければならない三津浜に見切りをつけ、
伊予鉄主導で近代的な旅客港が新たに高浜港が整備され、同時に線路も三津から高浜まで延伸されたときは、
“三津浜”の存在意義に関わる重大な危機ということで、地元有志により伊予鉄に対抗すべく松山電気軌道が設立され、
中心部から三津浜にお客さんを呼び込むため、その後10年間に渡って伊予鉄と乗客争奪戦を繰り広げたという、
港町らしい気骨溢れる挿話に彩られた、松山市の一地域だけでは収まらない歴史とスケールのあるエリアなのです。
結局、伊予鉄との路面電車戦争に敗れ松山電気軌道は吸収合併され、海の玄関口としての地位も高浜港に奪われ、
かつての賑わいは遥か昔…といった状況に陥った三津エリアではありますが、近年ではそれを逆手にとって、
大正~昭和初期の建物が多く残る町並みを生かした“レトロな町”として、にわかに活気づいているのであります。
また、旅客港は高浜へ奪われはしたものの、江戸時代から300年以上続いた“三津の朝市”の名残りでしょうか、
現在でも松山市の魚市場は三津にあり、港内には小型漁船がびっしりと停泊する、活況のある港町なのであります。
さらには後述するように“三津浜焼き”という広島風お好み焼きに似たご当地グルメも大きく脚光を浴びており、
松山市駅より電車で15分というアクセスの良さに、散策に良し、食べて良しと、まさに観光客向けのエリアなのですね。
前置きが長くなりましたが、まずは三津へのアクセスから。松山市駅から伊予鉄高浜線に乗って、約15分です。
ただし、効率よく三津エリアを周ろうと思うならば三津駅ではなく、1つ先にある港山駅に降りるほうがいいと思います。
見どころの1つである“三津の渡し”は港山駅からすぐに乗り場があるので、これに乗って三津エリアに入りましょう。
逆に、三津方面から渡しに乗り、港山駅方面に降りても何もありませんので。僕は知らずにそのパターンでしたが。
この“三津の渡し”は対岸まで約2~3分、約80mとわずかな距離ではありますが、その歴史は何と500年とも言われ、
現在でも年間5万人が利用する、周辺住民にとっては欠かせない重要な“足”なのであります。もちろん、年中無休です。
グーグルマップで周辺を確認すれば、この“渡し”がどれほど貴重な交通手段なのかは一目霊山だと思います。
もちろん、観光の目玉としても文化的な意味としても重要ですが、それよりも生活に密着しているところがいいですね。
乗り方は簡単。着岸している渡し船にそのまま乗るだけです。対岸にいる場合は、少し待てば迎えにきてくれます。
●松山市駅より伊予鉄高浜線に乗り、三津駅の1つ先にある港山駅からスタートがベスト
●500年以上の歴史を誇る“三津の渡し” この写真は三津側の乗り場です
●現在でも周辺住民の足として欠かせません 自転車ごと乗り込めるというのもいいですね!
●対岸まではわずか2~3分ですが、港内の眺めはなかなかいいですよ
港山駅から渡し船に乗って対岸に渡ると、三津浜の船溜まりに出ます。かなりの数の漁船が係留されていて、
さすがは松山魚市場のお膝元!といった景観に、思わず興奮しましたね。小さい漁船ですが、集まると迫力あります。
これくらい小さい漁船でどのような漁をするか素人の僕にはまるでわかりませんが、三津浜漁業組合の資料によると、
やはり“1本釣り漁”が多いようです。それにしても、漁港好きにはたまらない光景ですね~。好きな人にはお勧めです。
前回・前々回で紹介した『松山城』や『道後温泉』など、松山市中心部を散策するだけだと感じることはありませんが、
愛媛県は海岸線の長さが全国第5位を誇る“海に生きる県”なのです。伊予柑だけじゃないぞと、強く言っておきます。
写真は係留されている数々の漁船と、近くにある直売所『魚屋 かあちゃん』、そして三津商店街の魚屋さんのケースです。
この青いトタン造りが鮮やかな『魚屋 かあちゃん』は、名前どおり漁師さんの奥さんたちが立ち上げた直売所だけに、
朝獲りの鮮魚が並ぶわけです。もちろん、地元の人だって購入するので、朝早くに訪れないと売り切れ必至です。
僕も開店の8時と同時に突撃しようと思いきや、前夜に飲み過ぎてしまい何とか8時半過ぎに到着しましたが、
もはや『かさご』が数匹しかありませんでした。後ろでは、お母さんたちがお客さん用に様々な魚を捌いていましたから、
きっと開店直後で売りつくしてしまったのでしょう。その代わりというか、三津浜商店街にある魚屋さんの写真でも。
この飾り気のない雰囲気が最高ですよね。冷蔵ケースには無造作にに並べられている魚には種類も値段も説明なし!
これは伊予鉄古町駅近くにある古町商店街の大きな魚屋さんでも同じスタイルだったので、松山の基本線なのかも。
『魚の種類くらい説明しなくてもわかるでしょ!』といったあたり、いかにも海の恵みが豊富な町ではないかと思います。
●さすがは魚市場のお膝元だけあって、小型漁船がめいっぱい係留してありました
●小型船なれど、これだけの数が集まると壮大な景観となりますね!
●港にある直売所“かあちゃん” 開店後すぐに売り切れてしまうので、訪れるなら早めに!!
●三津浜商店街の奥にある魚屋さん 時間が止まったかのような午前中の一コマ
●ショーケースには獲れたての鮮魚がドーン!とそのまんま並べられています 種類/値段一切なし!
ここからは地域を挙げて売り出している“レトロな町”の写真をどうぞ。昔ながらの建物が残っているエリアは、
先ほどの船溜まりあたりから三津浜商店街周辺にかけて点在しているので、今回の写真で紹介したコースを辿れば、
港山駅→渡し→船溜まりから三津浜商店街方面へ歩けば、そこかしこにあるレトロな建築物に遭遇するでしょう。
とはいえ、今後の後追い旅行記で紹介するような、町並み保存地区に指定されている“内子”や“大洲”と比べると、
たまたま古い建物が住民の意識なく残っていたところに、現在のような“レトロ・ブーム”が突如としてやってきて、
にわかに注目を浴びたところに自治体も乗っかったという感じで、いかにも素朴に住宅街の中に存在するのです。
逆にいうと、“観光のためにやってます!!”といったギラついたアピールがなく、個人的には好ましく感じました。
これくらい生活感に溢れているほうが、歩いていて飽きないですね。ま、このあたりの好みはそれぞれでしょうが。
おそらく、建築に興味があったり勉強されている方ならば、このような古い建造物をさらに深く楽しめるのでしょうが、
僕はまるで知識がないので、ぼんやりと眺めて終わってしまいました。こういうとき、知らないってのは残念です。
それだけに、ただ残っている古い建物よりも、その裏に伸びている路地とか、現役で営業している醤油屋さんとか、
いかにも!といった風情溢れるスナック街とか、そちらに惹かれましたね。特にこのスナックの並び、最高ですよね!
滞在中に寄ってみたいなぁと思ったのですが、さすがに道後温泉の宿からは遠くて断念。それだけが心残りです。
●奥に映る建物だけでなく、手前の電柱も木造という組み合わせが良いですね
●時代に取り残されたまま佇むレトロな建築物があちこちに点在しています
●路地もたくさんあって、散策していて飽きません。当てもなく適当にぶらぶらと歩くのに良い町ですね
●こういった昔ながらの醤油屋さんが普通に営業していて浮かないところがすごいですよね
●突如として現れたスナック通り!!どの店名もいいじゃないですか!!夜に再訪したかったなぁ~
最後に冒頭で紹介した“ご当地グルメ”として盛り上がりをみせている『三津浜焼き』の写真を載せておきます。
見た目は完全に『広島風お好み焼き』ですが、牛肉を使っている点と、麺の台にうどんを選べる点が微妙に違います。
この三津浜焼きを出すお店が、狭い地区に25軒もひしめき合っているというのだから、熱狂のほどが伺えますね。
僕が訪れたのは、三津駅から徒歩2~3分と程近く、伊予鉄高浜線の線路沿いにある人気店、『日の出』です。
あとでデジカメを見直して気づいたのですが、線路沿いに佇む年季の入ったお店の外観を撮り忘れていました。
わずかカウンター5~6席のみの小さな、それでいて存在感のある趣のある外観だったのに、ほんと残念です。
お店の渋い外観通り、寡黙なご主人が焼いてくれた三津浜焼き(そば台)は、思っていたよりもボリューミーでしたが、
熱せられた鉄板によって立ち昇る香ばしい匂いにつられて、もちろんビールを注文しましたよ!この組み合わせ、最高!
小さなヘラを使って食べるのですが、これが止まらないのですよね。もう、切っては食べ、切っては食べの繰り返しで、
気が付いたときには、綺麗さっぱり平らげてしまったというくらい、余裕で完食してしまいました。美味しかったなぁ。
こういう料理って、やっぱり雰囲気が大事ですよね。同じものを食べても、街中の小洒落た店で食べるより美味い!
そして、もう1箇所おまけに紹介したいのが、三津駅から先ほど紹介したエリアとは反対方向にある『厳島神社』です。
創建は西暦600年代という長い歴史がある、赤い本殿で有名な安芸の厳島神社を総本社にいだく神社であります。
住宅街で緑の少ない三津周辺では、一目でそこに神社があることがわかるほど、本殿周囲には木々が鬱蒼としていて、
ちょっとした“鎮守の森”といった景観があり、中にある明治期に建て替えられた本殿もなかなかに味わい深く、
暇つぶしがてら寄ったわりには悪くなかったです。でも、写真でもわかるように、立て看板が雰囲気を壊しますね。
そもそも、僕がここを訪れたのは参拝が目的ではなく、この神社の目の前にある食堂『高見屋』さんだったのですが、
当日はなんと臨時休業でした…。戦前から80年以上も続く、松山で最も古い食堂の雰囲気を味わいたかったなぁ。
ま、食堂でうどんでも1杯食べて、なおかつ三津浜焼きを食べるというのは大食漢でもないと大変なことですが、
せっかく三津浜まで足を延ばすなら、地元で人気の食堂でご飯を食べるというのも間違いのない選択肢ですよね。
どちらかといえば三津浜焼きのほうがお勧めですが、食堂好き!という方にはこちらがお勧めです。
●三津といえば“三津浜焼き”でしょう!ビールにぴったりです!!けっこうボリュームありますよ!!
●三津の厳島神社正面より この真後ろに松山市で最も歴史のある食堂があります
●せっかくの厳かな景観を、立て看板がぶち壊していますね。これはいらないよ本当に。
こんなところで“三津浜編”を終わらせて頂きます。個人的には、すごく楽しめたエリアでした。中心部から近いし。
残念なのは、三津にある松山市の魚市場が一般見学を受け付けていないところですね。これはもったいないです。
三津と言えば砂浜で行われていた“朝市”が特に有名だし、その賑わいは子規記念博物館の絵でも確認できるし、
せっかく町興しで観光客を呼び込もうというならば、魚市場も開放してくれたらもっともっと楽しめるのになぁと思います。
例えば二年前に訪れた鹿児島の魚市場なんて、事前申し込みすらいらないですからね競りを見学するのにさ。
見学者がウロウロしたり、色々と煩雑なことは十分理解できますが、それでも町にとってプラスになるはずです。
ま、魚市場は見学不可でしたが、青果市場を見学できたのでヨシとします松山は。今年の長崎なんて、どっちもダメだし!
というわけで、後追い松山旅行記も市内が3回続いたので、次回は日帰りで巡ってきた“今治編”をお送りします。
もちろん、更新時期は未定です。
それではまた。









