レーザーフィラーという新しいアイデア:イージスYAG | 美容外科開業医の独り言

美容外科開業医の独り言

美容医療とは人間愛!という信念で仕事をしている美容外科医のブログです。
レーザーなど最新の美容情報や普段の診療で感じたことなど、ぼやきを交えながら書いていきます。
外見だけではなく心も綺麗になり、自信が湧いて幸せになれる、そんな美容医療を目指しています。

レーザーフィラーとは、フィラーつまりヒアルロン酸やコラーゲンのような注入剤の効果を、針を刺さずダウンタイム無くレーザー照射で実現させようという手法です。言葉としては造語ですが、一番意味が伝わりやすいということから、これをキャッチコピーにしています。
従来のヒアルロン酸と同じく法令線や目の下、目尻などに有効な治療法です。

もちろんレーザーによってヒアルロン酸注射が不要になるわけではありません。注入剤と全く同じ効果がレーザーで得られるはずはないのです。しかし、従来のレーザーは皮膚表面の張り・つやをアップしたり、ちりめんじわの改善、皮膚の引き締め・引き上げが主であり、ボリュームを増やすような働きを得ることは困難でした。新しいレーザーフィラーは、局所の窪みに対して照射をおこない、微量ではあるものの膨らませることが可能となったのです。これは画期的なことです。

ではなぜ今まで、レーザーでこのようなことができなかったのでしょうか。これはレーザーという光の特性にあります。光が皮膚を透過するときには必ず反射、吸収、散乱が生じます。皮膚の透過時に最もエネルギーが高くなる・吸収されるのは表面付近なのです。つまり大量の強いエネルギーを入れようとすると皮膚表面が熱傷を起こします。これを回避するために表面を冷却したり、フラクショナル(無数の小さなビーム)状にしたりという対策が必要でした(もしくは低出力で長時間照射)。

レーザーフィラーは、あるポイントに焦点を合わせながら回転しつつレーザーを断続的に発振させることによって、皮膚表面よりも内部に熱だまりを作ることが可能な装置です。
実験段階時に通常設定よりもかなり高出力で照射を試したところ、皮膚の内部に硬いしこりができたほどです。冷却による保護などではなくレーザーで本質的に人体内部から熱が発生するということは画期的であり、この理論を用いることで内部から熱破壊と再構築による組織のボリュームの増加が生じます。

1ヶ月毎に数回治療後はメンテナンスで数ヶ月毎治療となります。
この理由ですが、刺激によってまずコラーゲンの膨張が起こり、その持続は長くは続かないために、反復して数回照射をしてコラーゲンの破壊と再構築を立体的に厚みを持って生じさせます。その後初期段階で増殖した硬さのあるコラーゲンが徐々に柔らかいコラーゲンに変わる頃にメンテナンスとして再照射をすると良いと考えています。

治療適応としてはヒアルロン酸やコラーゲン注入が適しているが注射はしたくないという患者層がベストと考えます。また微妙なシワであり、注入剤では歪んでしまうリスクのあるシワも良い適応でしょう。もちろんこれは医師の腕の善し悪しなどの相対的なものにも左右されます。

イージスYAGによるレーザーフィラー、私自身が開発から関与しているので、思い入れもあります。本当は広く普及してほしいのですが、手作りレーザーであり大量生産は難しい様子、どこのクリニックでも簡単に受けることが出来る治療にならないのが欠点です....