2768.中庸と詩経(12)顕われざらんや惟れ徳、百辟其れこれに刑る | 論語ブログ

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中庸と詩経(12)顕われざらんや惟れ徳、百辟其れこれに刑る

 

詩に曰わく、顕(あら)われざらんや惟れ徳、百辟其れこれに刑ると。

是の故に君子は篤恭にして天下平らかなり。

   仮名中庸 第三十三章 85頁1行目

   伊與田先生の解釈

詩経「周頌烈文篇」に、「深淵な文王の徳は、逆に顕れないことがあろうか。諸侯は自らこれに法る」とあるが、君子(天子)は篤敬であって天下自ら太平である。

 

「詩に曰わく、顕(あら)われざらんや惟れ徳、百辟其れこれに刑ると」・・・この部分は、「詩経」周頌の烈文篇に出てきます。この詩は、周の宗廟の祭にそれを助けた諸侯に献ずる歌といっています。「百辟」の辟は君の意味で諸侯のことです。

明らかに現れでた先王の徳は、諸侯達は皆これを手本としました。あまたの諸侯たちは、国を治めるのに皆この徳を模範としている。と歌われています。

「是の故に君子は篤恭にして天下平らかなり」・・・そうしたわけで、君子はひたすら徳を守って、我身をつつしみ誠実にして、それで天下も平安に治まるのです。

ここには「徳治」による影響力が説かれています。儒家の徳治と違って、法家は法律と刑罰で世の中を平定しようとしますが、このやり方を「法治」と呼びます。しかし、仮名論語11頁6行目、孔子も言っているように、「之を導くに政を以てし、之を斉うるに刑を以てすれば、民免れて恥ずることなし」です。つまり、人々を方向づけるのに法制をもってし、規制するのに刑罰をもってすれば、人々は恥も外聞もなく法の網の目をかいくぐって免れようとするものです。為政者は心すべきでしょう。

いつものように、「詩経」を見てみましょう。周頌の烈文篇は一章十三句の詩です。

烈文(周頌)

烈文辟公 錫玆祉福

烈文なる辟公(へきこう)  玆(こ)の祉福(ちふく)を錫(たま)う

惠我無彊 子孫保之

我を惠すること彊(かぎり)無し  子孫之を保んず

無封靡于爾邦 維王其崇之

封(おおい)に爾の邦を靡(び)すること無きは  維て王其れ之を崇ぶ

念玆戎功 繼序其皇之

玆(こ)の戎功(じゅうこう)念(おも)い  序を繼(つ)いで其れ之を皇(おおい)にせよ

無競維人 四方其訓之

競うこと無からんや維れ人  四方其れ之に訓(したが)う

不顕維徳 百辟其刑之                 (出典箇所)

顕(あきらか)ならざらんや維れ徳  百辟(ひゃくへき)其れ之に刑(のっと)る

於乎前王不忘

於乎(ああ)前王(ぜんおう)忘られず

・輝く武功と文徳のある諸侯よ、我が祖宗(末句の前王)が、この祉福(さいわい)を我ら君臣に賜り、

・我(王)を恵み愛すること彊(かぎ)りなく、子孫の世々これを受け保っている。

・汝ら諸侯においても、大いに利を専らにして奢侈に流れるようなことがなければ、これを尊敬して爵土を増し厚遇するであろう。

・汝(諸侯)の先祖が、王家に尽くした大功を念うて、先祖の緒を継いで、さらにこれを大いにするようにして、王家に勤めよ。祭を助くる諸侯に、深く期待し望むのである。

・賢人が競い起こって勤めるので、国も盛んになり、四方の国々が、これに順って服する。

・王の実徳の明らかなものがあるので、多くの諸侯も、これに則って傚う。

・ああ、文武の前王が賢人を用い、徳を明らかにしたことは、実に忘れてはならぬ。今日、祭を助ける諸侯も、前王の儀刑に法り、これを亀鑑として民を治めねばならぬことを誡めたのである。

以上が、出典となる「烈文」の全章句です。この章句の十一句と十二句を断り取って「中庸」に載せてあり、断章取義です。

この「烈文」の詩序を見ると、「烈王は、成王政に即き、諸侯祭を助くるなり」とあります。成王は周王朝の第二代の天子ですが、父も武王が亡くなった時は、まだ幼少でしたので、叔父の周公旦が摂政して周王朝を創建中でした。成王が成長したので周公旦は政を成王に復します。成王八年の春、初めて宗廟に祖公(父・武王)を祭り、諸侯が祭を助けたと言うのです。

 

つづく

                                                                                              宮 武 清 寛

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