母の心配がなくなり、少し身軽になった私は、里早の診察に間に合うように、午前5時半に家を出ました。

 

 里早の下宿に寄り、里早を拾い、病院へ向かいました。 

 

 里早の担当医から病名を告知され、今の状態では入院が望ましいと言われました。

 

 ひとまず薬を試してみるということで、様子を見ることになりました。

 

 しかし、薬が効かなければ、ひと月の入院が必要だと言われました。

 

 そして、入院するなら里早のいる大阪にするのか、私の住む愛知の病院にするのか、考えてほしいということでした。

 

 里早はすでに休学をしており、これ以上の休学は留年につながる恐れがあるために、何かあれば大学に行ける大阪での入院を望みました。

 

 里早は口にしませんでしたが、経済的な理由も考慮していたことは察せられました。

 

 1年間学生でいる時間が長くなれば、その分学費、下宿しているために家賃や生活費などもろもろの費用がのしかかってきます。

 

 しかし、顔も真っ青でもう立っているのも弱々しい様子の里早。

 

 一方で、母がいずれロングショートへ移行するといっても、私は認知症の母を抱えており、重度知的障害を伴う自閉症の彩夏もいます。

 

 彩夏は、ショートステイを拒んでいますし、今すぐどこかを見つけることも難しく、私は簡単に大阪まで来れる身ではありません。

 

 「なあ、留年覚悟で、愛知で入院せんか?愛知やったら、私が毎日でも見に行ったれるし・・・。今回、しっかり治しておかへんか?」

 

 (私は子どもや母と話す時は、自然と関西弁なんです。私が関西弁を話し出すと、びっくりされます。普段、関西弁の訛りが出ていないらしくて・・・)

 

 その日の血液検査結果も出て、診察室に呼ばれた時、医師には愛知で入院をしたいことを、里早は伝えました。

 

 ひとまず、約ひと月の様子見の時間が与えられました。

 

 ひと月後の結果によっては、紹介状をもらうということになったのでした。