知的障害を伴う自閉症の彩19歳の彩夏は、今ではよく雑誌やパチンコ店の広告に載っているアニメの女の子の絵を見ながら描き写しています。

 
    どの様な経過で今に至ったのか書いていきますね。

 最初は芯の柔らかい鉛筆やクレパスを持たせました。
 
    まだまだ筆圧が弱かったので、クーピーだと書けなかったのです。
 
    彩夏は私が手を添えることを非常に嫌がりました。
 
     皮膚過敏も原因でしょうし、自分が出来ると思っていることを介助されるのが嫌だったこと、見えないけれど自分の持っていたテリトリーに侵入されるのが嫌だったということが主な理由だったと思います。

 そこで彩夏の隣に座り、広げた落書き帳に、毎日ひたすら時間があれば、果物や野菜、動物、丸・三角・四角の形を描いてやりました。
 
    それらの絵の上には、ひらがなやカタカナで名前を書いておきました。
 
    少しでも彩夏に文字に触れて欲しかったからです。
 
     彩夏はじっと私の描くもの、描く過程を見ていました。

 やがて彩夏は3歳で丸を描き、次には雲のような形を描き出しました。
 
    そこで私は簡単な形を組み合わせるだけで描けるミカン、リンゴ、ブドウ、クマ等の絵を描いてやりました。
 
    すると機が実ったらしく、彩夏はそれらを私の描き順通りに真似て描き出しました。

 彩夏は次第に顔を描き、手足を描き、服を着た人を描き出しました。

 5歳の時には、ある魔女見習いの5人の女の子のアニメに興味を持ち出しました。
 
    そこでそのぬりえを買って与えると、主人公の髪型、洋服、靴などを見て、真似て描き出しました。
 
    しかもクレパスで色さえ真似て。
 
    そして、観察力もアップし、イヤリングなどの小さな小物さえ描きました。
 
    その他の登場人物たちも描くようになりました。
 
    ちゃんとそれぞれの髪型、洋服の色なども描き分けていました。
 
    時には色鉛筆、筆圧が強くなるとクーピーを使って。
 
    やがて、キャラクターの目の色塗りでさえ、2色で色分けして塗るようになりました。
 
    紫でも紫と赤紫というように使っていました。

 彩夏は落書き帳を3日もあれば使い切るようになりました。
 
    彩夏は同じ絵を描くばかりでしたが、その集中力には感心させられました。
 
    30分、1時間は没頭していられるようになったのですから。
 
    好きなことを行う集中力が見られるようになったのです。