2016.8.30 Tues.

«m»






周りの喧騒は遠ざかり、まるでピンスポットがあたっているみたい…。


「やっぱりココだった。」


気持ちを再確認するには充分だ。
トクン…
鼓動が響き、体温が上がった。


「お待たせ。
 久しぶり、潤くん♡」


今にも透き通りそうなニノが微笑んでいた。


一瞬、見つめ合ってしまったのはなぜだろう?オレの気のせいじゃないよね?
自分に言い訳するようにフードコートへ誘う。




夏休みの間にH県の家に帰っていたこと、
R学園の友達と会ったりしてたことをニコニコと話してくれる。
オレもバスケの合宿のこととか当たり障りのないことを話す。

前の学校の友達ってことは…
お母さんを亡くして辛いとき
傍らにいたクラスメイトだよね?

それに…“彼女”にも会ったりした?


オレの知らないニノ。
どうしようもない出会う前の出来事。
話せば話すほど、聞けば聞くほど、
訳の分からない嫉妬心と自分の器の小ささを感じて、ジワジワと落ち込む。


早々に食べ終わり、ソフトドリンクを買って向かい合う。

「ハイ、これ。
 一応コピーしておいた。」

S学院の…今のオレ達に引き戻したくて、
テストのコピーを差し出した。
そもそも今日の本題だし。

ちょっと困ったような顔をしてニノが受け取ってくれる。

これからずっと一緒に…。

たった一言…なのに口ごもってしまう。
ニノはゴソゴソとカバンに手を突っ込んで何かを取りだした。





「ね、違ってたらごめんだけど…。
 潤くん、今日って誕生日じゃない?」
「え?うん。そう! なんで?」
「ハイ、これプレゼント。
 16才おめでとう。」
「わ、あ、ありがとう。
 え、めっちゃ嬉しい。」


今の今まで落ち込んでいたのに、
一瞬でテンションが跳ね上がる。


「もしかしたらって思って…急に用意したからたいしたものじゃないけど。」


見覚えのある包装紙、ショッピングモール内の文具店で買ってきてくれたんだとわかる。


「開けて良い?」
「もちろん。」


文庫本用のソフトレザーのブックカバーだ。
表面はマットな黒、小さく“J” の型押し。
内側の折り返しは鮮やかなバイオレット。
すごくオトナっぽい。


「すごくいい、気に入ったよ。
 ありがとう、使わせて貰うね。」
「良かった。」
「イニシャルなんて…高かったよね?」
「全然。これ、サービスなの。」
「ほんと?
 カッコイイよ、サンキュ。」
「あの…どうせバレるから今言うけど…
 ひかないでね?」


またガサゴソとカバンを探って取り出してきたのは…。やっぱり黒のブックカバーで折り返しはクリームイエロー…。まさかのお揃い?


「私も欲しくなっちゃって…。
 色違いにはしたんだけどね…。
 あ、キモイよね?ごめんね。」
「や、大丈夫だよ。
 イニシャルは?」
「うん、入れちゃった。」


パッと見にはオソロってわからないのに
このカレカノ感!
もうダメだ。
カワイすぎて顔がもたないよ。

今までで一番嬉しい誕生日プレゼントだ。
ここまでオレを喜ばせてくれるなんて!
少なくとも今はオレのことをちゃんと考えてくれたってことだよね?

さっきまであんなに落ち込んでいたのが嘘のようだ。


ニノと過ごせるこの日々を大切にしよう。
16才は最高のスタートを切った。