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今週末、学院バザーがある。
PTA主催で、高1がメインで手伝う。
高3は家庭学習日、受験勉強優先だ。

学院バザーは一般開放されるので参加券を購入した地域住民の方々も大勢いらっしゃる。
中庭の屋外ステージで、各部や有志がちょっとしたパフォーマンスをしたり…、小ホールで軽食を販売したり…。
せっかくの来客をもてなす為に色々工夫されている。

留学前からイベントには殆ど参加していなかったけど、今回は和也が軽音のボーカルで参加するから覗いてみようと思う。
前日の校内プレステージより一般客が多い当日の方がうまく紛れられるだろう。



週に2回のふたりの時間を削ってまで練習したギターの出来栄えも気になるし…。口ずさんでいた歌声は澄んでいて…。
とにかく知れば知るほど魅力が溢れ、複雑な心境だ。

放課後は家で練習したいからとモデルは昼休みにしてもらっている。キャンセルしないで少しでも逢いに来てくれるのが愛しい。




「和、本当に歌うの?」
「はい、ギターが間に合わなくて、せめて歌だけでもちゃんと歌わないと…。櫻井先輩やメンバーのみなさんに申し訳ないです。
モデルしないで練習させてもらったのに、中々上達しなくてごめんね。」
「そうか…仕方ないな。
 学校行事なんだから制服だろう?」
「プレステージはそうです。」
「え?本番は違うの?」
「クスクスッ、智もそこが気になるの?」
「それは…。一般客も大勢いるんだろうから、和はあんまりカワイイ格好しない方がいい。」
「ちゃんと男子高校生らしい格好です。
 なぜか潤くんや相葉先輩にも釘刺されましたから。櫻井先輩だけはカワイイ路線を推してたけどふたりに猛反対されて…。」
「櫻井くん、油断ならないな。相葉くん、松本くんはグッジョブだ。」
「智も聞きに来てくれるの?
 それなら、お父さんと一緒に来てくれますか?お父さん学校行事なんて出たことないし、S学院も1回しか来たことなくて…。」
「わかった。朝、和の家を回るよ。」
「ありがとうございます。」





絵に描いて世間に伝えたい。
自分の絵で思う存分 表現したい。
その素晴らしさを見せびらかしたい。

絵に描きとめて、そのまま保存したい。
自分だけのモノにして隠してしまいたい。
閉じ込めて誰にも見せたくない。


自分でもよく解らない感情が入り乱れ、制御できない。
ただ、和也の思うままに生きて欲しい。
抑えてきた自分を解放できるのなら…。



耐えろ…。
見守ると決めたのだから…。