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昼休みの謎が解ける。
「S学院生が来たんですか?」
2時頃っておかしくないですか?」
「……。」
「そうだね。誰だろうね?」
「……。」
「入院してること自体、先生とオレらしか知らないはずじゃ…。」
「翔チャン、心当たりあるの?」
「ごめん、オレ、耐えられなくなって。
もう二宮をほっとけないと思って、
そしたら雅紀があんなコト言うから。」
前にニノちゃんをソファで見つけた時のことか…。そりゃ僕も確かめたくなったけどさ。
「で…、大野さんはなんて?」
「えぇ?大野さんに?」
「それが、何も…。
昼休みさ、予備教室まで走って行った。
今日は来てるかもと思ってさ。
で、居たんだけど、話す前に予鈴がなって、大野さんはすぐに帰ったんだ。」
「帰ったんですか?」
「オレが行った時、ちょうど帰るところでさ、聞きたいことがあるって言ったら、『時間切れだから来週聞くよ』って。」
「で、そのまま帰したの?」
「いやオレ、言ったんだよ。」
「あの…。二宮くん、知ってますか?」
「和也がどうした?」
「木曜日に、倒れて入院しています。
ずっと目が覚めないんです。
錦野総合病院です!」
「何も言わず、そのまま踵を返して…。
それが今日の昼休み終わりだから、そのS学院生はたぶん大野さんだと思う。」
「…和也って…。ニノを知ってた…。」
潤は呆然としている。
僕は驚かない。確かめなくてもわかってた。
「黙って帰ったから、無視?逃げた?とか、知らんぷりされたと思ったのに。」
「翔チャンにきいて、真っ直ぐ病院に行ったんだね、きっと。」
思い出すように潤が言った。
「ニノもさとしって言ってた…。
そうか、昨日のうわごと『…し…』は
『さとし…いかないで。』だ。
『お母さん』とも言っていたけど…。」
そう言えば父さんも看護師さんが『とし』って聞いたと言ってた。
「僕も翔チャンも“さとし”なんてピンとこなかったよ。
大野さんは“大野さん”でニノちゃんがそう呼んでたことも忘れてたよ。」
和也と智…。急接近にも程がある。
一体何があったの?
「明日退院か…。
学校は早くても明後日からかな。」
「そうだね。体調は問題ないからね。」
「じゃあ、何故倒れたんですか?
オレはニノが心配です。
きっと明後日から平気な顔して、いつもみたいにニッコリ笑って、普通に暮らすんですよ。お母さんが亡くなってもそうしたみたいに…。」
明らかに潤が辛そうだ。
「本人が普通にするなら、コッチも普通にするしかないだろ?」
翔チャンがらしからぬ事を言った。
もうこれ以上話すこともない。
思い詰めた表情の潤を真ん中に、
黙ったまま駅に向かうしかなかった。
昼休みの謎が解ける。
「S学院生が来たんですか?」
2時頃っておかしくないですか?」
「……。」
「そうだね。誰だろうね?」
「……。」
「入院してること自体、先生とオレらしか知らないはずじゃ…。」
「翔チャン、心当たりあるの?」
「ごめん、オレ、耐えられなくなって。
もう二宮をほっとけないと思って、
そしたら雅紀があんなコト言うから。」
前にニノちゃんをソファで見つけた時のことか…。そりゃ僕も確かめたくなったけどさ。
「で…、大野さんはなんて?」
「えぇ?大野さんに?」
「それが、何も…。
昼休みさ、予備教室まで走って行った。
今日は来てるかもと思ってさ。
で、居たんだけど、話す前に予鈴がなって、大野さんはすぐに帰ったんだ。」
「帰ったんですか?」
「オレが行った時、ちょうど帰るところでさ、聞きたいことがあるって言ったら、『時間切れだから来週聞くよ』って。」
「で、そのまま帰したの?」
「いやオレ、言ったんだよ。」
「あの…。二宮くん、知ってますか?」
「和也がどうした?」
「木曜日に、倒れて入院しています。
ずっと目が覚めないんです。
錦野総合病院です!」
「何も言わず、そのまま踵を返して…。
それが今日の昼休み終わりだから、そのS学院生はたぶん大野さんだと思う。」
「…和也って…。ニノを知ってた…。」
潤は呆然としている。
僕は驚かない。確かめなくてもわかってた。
「黙って帰ったから、無視?逃げた?とか、知らんぷりされたと思ったのに。」
「翔チャンにきいて、真っ直ぐ病院に行ったんだね、きっと。」
思い出すように潤が言った。
「ニノもさとしって言ってた…。
そうか、昨日のうわごと『…し…』は
『さとし…いかないで。』だ。
『お母さん』とも言っていたけど…。」
そう言えば父さんも看護師さんが『とし』って聞いたと言ってた。
「僕も翔チャンも“さとし”なんてピンとこなかったよ。
大野さんは“大野さん”でニノちゃんがそう呼んでたことも忘れてたよ。」
和也と智…。急接近にも程がある。
一体何があったの?
「明日退院か…。
学校は早くても明後日からかな。」
「そうだね。体調は問題ないからね。」
「じゃあ、何故倒れたんですか?
オレはニノが心配です。
きっと明後日から平気な顔して、いつもみたいにニッコリ笑って、普通に暮らすんですよ。お母さんが亡くなってもそうしたみたいに…。」
明らかに潤が辛そうだ。
「本人が普通にするなら、コッチも普通にするしかないだろ?」
翔チャンがらしからぬ事を言った。
もうこれ以上話すこともない。
思い詰めた表情の潤を真ん中に、
黙ったまま駅に向かうしかなかった。