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ホームルームが終わり、ふたりで図書館へ向かう。
ニノが担任に呼び止められた。

「潤くん、先に行ってて。」
「了解、図書館はわかるよね?」
「うん、大丈夫、先輩によろしくね。」

先に行ってもな…。
そもそもニノが気になっている人の話だ。

ただ気になるのは、先輩方の反応だ。
様子からして心当たりがあるのだろう。
なぜ時間をとってまで話してくれようとす
るのか?
単純にニノへの興味?口実?
だとしたら、櫻井先輩のあの態度も納得できるんだけどな。

とりあえず待たせては申し訳ないからひとり図書館へ向かう。


「潤!こっちだよ。」
「松本!上、上。」

図書館の上の方から声が降ってくる。

見上げると先輩二人がバルコニー席から
手を振っていた。
なるほど。図書館は私語厳禁が原則だから
どうするのかなと思ってた。
2階の閲覧室から出られるバルコニー席なら話せるし、出入り口を締めておけばちょっとした個室になる。

急いで階段を上がった。

「お待たせしました。」
「ニノちゃんは?」
「担任に連れていかれました。」
「え?どうして?」
「わからないです。時間あるかって。」
「編入してどうだ?とかの面談だろ。」
「じゃあ、きっと時間はかからないね。」

やっぱりなんか変だ。どうしてここまで?

「あの、ニノはまだですけどあえて質問して良いですか?」
「うん、俺らも先に松本に確かめたいことあるから。」
「断片的な話だけで、わざわざ時間をとって下さるってことは、お心当たりがあるんですよね?」
「まぁ、そうだ。」
「それは俺も知らない人なんですか?」
「たぶんね。…知らなくてもいい人。」
「俺たちから二宮に言えるのは、ただひとつ『かかわるな』ってこと。」
「なぜです?」
「理由は簡単、だけど複雑。」
「だからこそ、いきなり二宮に伝えて大丈夫かどうか、松本に確認したかった。」


俺だって出会ってまだ1週間、土日挟んでいるから実質5日目なんだ。

「ニノのことは正直よくわかりません。
 今日をいれてもまだ5日間しか会って
 いないんです。」
「成績優秀は間違いないです。
 今日の授業は全て完璧でした。」
「誰に対しても優しく接して、受け答えもそつなくこなし、敵を作らないです。」
「見た目通り、可愛らしくてスッと懐に入ってきて…。でも、本当の彼は何か違うような気がして…。」
「ベールがかかってるみたいで、踏み込めないんです。」


止まらない。
先輩の問いかけに一気に捲し立てていた。