延長戦が始まった!



選手達の意地と意地がぶつかり合い、点差が離れないまま・・・



延長戦後半
大同30ー29湧永



残り15秒で大同がリード!


湧永、福田のシュートを大同GK、高木がナイスセーブ!

ルーズボールを、ペクが決死に拾い上げ速攻パスを出す!




この速攻が決まれば2点差になり、大同の勝利が決まる!!




選手達があちこちで交錯(こうさく)する中、青いユニフォームがコートに飛び出す!



坪根だ!!



GKの坪根がゴールエリアから果敢に飛び出しボールを奪った!!



逆速攻ーーー!!



大同の選手が慌てて反転する!


湧永は決死で大同ゴールに走る!!




坪根が選んだのは・・・?



東慶一!!




みやむ
(同点、同点、同点・・・)



僕は心の中で祈っていた!


両応援団は祈るばかり!

会場にいたファンも、どっちを応援してるか見失っていた!!




東がボールをキャッチし全力で走る!!・・・





ガッシーーーン





ゴール前で大同、武田亨がファールで止めに掛かる!!




明らかにラフプレー・・・!!



でも止まった・・・



東は顔をしかめながら床を叩く!



が・・・



倒れながらも片足は伸びたままで立ち上がれない!



武田がうつむきながら立ち上がると・・・



ピーーピーーピーーピーーピーー!!



レフェリーは武田に走り寄りながらレッドカードを提示!!



失格!



この試合、3人目の失格者だ・・・



みやむ
(どうなっているんだ、この試合!?)


いくら極限状態であっても

ボディコンタクトが許されるハンドボールであっても

「ラフ」はいけない




僕は観客席にいる立場から一瞬そう思ったが・・・



武田がコートから立ち去り、大同ベンチ横を通る。

体のあちこちを叩かれるが、笑顔はもちろん、彼は顔を上げなかった。


彼は分かっている・・・


武田はこのプレーでチームのために一人、泥を被ったのだ。


試合の事よりもスポーツマンである自分への自問自答と、倒れている東を思いやりながら・・・


武田は会場を後にした。



コートの中では東がやっと立ち上がり、会場から拍手が湧き起こるが、スコアボードの時計は試合終了の時刻を指したまま・・・



オフィシャル席とレフェリーとの間で長い協議が続いている。



会場はヤキモキするが。




ゴール前、残り2秒でのフリースローから試合開始!




・・・





ここで一度整理しよう。


大同は2人退場でコートプレーヤー(壁)は4人


湧永は残り2秒のため、GK坪根までも攻撃に参加できる。


時間は残り2秒!

オフェンス(湧永)からすれば先程のノータイムフリースローと違い、味方選手も攻撃参加できるし、0.1~1.5秒間動けるのだ。

ハンドボールは名前のごとく、手でボールを扱えるため0.1~1.5秒あればシュート可能だ!
(但し、相手ディフェンスの壁を破らなければならないが)




ディフェンス(大同)側からすれば2人退場中のため人数が少ない。
湧永がボールセットをする位置によってはブラインド(影)になりボールの出どころが分からない。

ただ勢いだけが余り、壁が不用意にジャンプしてしまうと、隙間が開いてしまったり足元への注意が疎かになったりする。

また、何度も書くが大同は退場者のため人数が少ない!

壁に人数を集中させると湧永の他のシューターにフリーに打たせてしまう危険性がある。


大同の壁は千々波、ペクの2枚

少し離れた両脇に末松と山城の2人がいる





湧永武藤は半身片手の体勢で、手のひらにボールを乗せている。

壁の前には福田が正面を向いて、その横に古家がゴールを背にしてる。

壁の脇には坪根、渡辺が陣取り、誰がシュートを打つか分からない!




ここで試合再開のホィッスル!




ピーー!




スッ



武藤が低くボールを差し出す!


古家が冷静にボールを受け取る!

少し離れていた末松が湧永の作戦に気付き、古家に両手を被せに走る!


古家は振り向きざまに、ペクの頭越しに伸び上がりながらシュートを打つ!!



抜かれた!!





と思った瞬間、GK高木は味方の壁がブラインドになり対応できない!!



決まったーーー!!

同点ーーーーー!!!



湧永の選手達は抱き合って喜ぶ!!



「ウォーーー!!」



ゴール後ろで見ていた僕は古家の叫び声が聞こえた!!


大同のディフェンス陣はは気持ちを切り替えてか、ゆっくりとベンチに下がるが、高木だけが立ち上がれない!



末松や数名の選手達に促され、やっと今、立ち上がった。



しかしベンチに帰ってもタオルを頭に被り、椅子に浅く腰掛けながら、うなだれる高木。



試合は第二延長が始まる。



この試合はどうなるのだろう・・・?



~続く~