麻生副総理が社会保障費の増大に絡み、「高齢者が悪いようなイメージを作っている人がいっぱいいるが、子どもを産まない方が問題だ」と発言したことが報道されています。産む、産まないというのは個人の生き方の選択であり、これを「問題」視するのは人権無視の発言です。しかも、産みたくても子どもを授からず悩んでいる方もたくさんいます。


重大なのは、自らの政治が、子どもを産めない環境をつくりだしておきながら、子どもを「産まない」、私たち国民の側に問題があるかのような態度をとっていることです。


国立社会保障・人口問題研究所の調査(2010年調査)では、夫婦にたずねた理想的なこども数は平均2.42です。理想的なのこども数に近いこどもを持てるような環境をつくることこそ政治のつとめのはずです。そうすれば少子化の状況はあらためられます。


なぜ、理想の子ども数をもたないのか、同研究所の調査では、予定子ども数が理想子ども数を下回る理由として最も多いのは「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」(60.4%)でした。年齢・身体的理由が35.1%、育児の負担に耐えられないが17.4%、夫の家事・育児への協力が得られないからが10.9%です。とりわけ、理想を3人以上としている夫婦では理想を実現できない理由として「お金がかかりすぎる」(71.1%)といった経済的理由を挙げる割合が高い。



理想の数の子どもをもたない理由

つまり、理想のこども数をもてない原因は、低賃金不安定な非正規雇用の広がり、世界トップクラスの高学費、給付制がないという先進国最低レベルの貧困な奨学金制度、異常な長時間労働の問題など、長年の自民党政治がもたらした日本の雇用、教育政策のゆがみであることが、調査からも明らかです。


自らの責任を棚にあげて、私たち国民に責任を転嫁する麻生副総理の発言は天に唾するものです。


本当に、社会保障の未来、この国の未来を考えるならば、大企業に顔を向けた雇用政策を転換し、雇用者正社員が当たり前のルールを確立し非正規から正社員への転換すすめること、異常な長時間労働の法的規制が必要です。税金の使い方をあらため、ゼネコン奉仕の国土強靭化の名による浪費型公共事業をやめるなど、大学まで含めた教育費の負担の思い切った軽減が必要です。