ドナルド・トランプの経済政策が間違っている所 その1 | 宮本 茂@横浜 書きたい事を書くブログ

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まあこの老人が経済をキチンと理解しているとは思えませんが、間違っているポイントについては具体的に示さないと理解できない人も多いでしょう。
という事で、まずは業界を特定している自動車産業と鉄鋼について。
 
ドナルド・トランプが明言していたのは、
・日本は(私が)見たこともない無い大きな船で大量の車を(米国に)輸出していて不平等だ
・日本で米国車が売れないのは日本が悪いから
・(鉄は国家なりなので?)鉄鋼業を復活?させる
という内容でした。
 
まずは自動車の貿易について。
1980年代から1990年代に発生した日米貿易摩擦で、自動車、農産物がその対象となったとき、日本から米国への輸出台数は182万台でした。
現在(2014年末)は、米国向けの輸出台数は153万台
そして一方で日系メーカーの米国での生産台数は、まだ貿易摩擦真っ最中の1985年は29万台でしたが、2015年現在は、13の工場で380万台製造しています。
大量の雇用も生み出しているわけですし、最近では部品の現地調達率も上げる努力をしています。
貿易不均衡だなどと言われる理由は最早ありません。
ドナルド・トランプの頭の中は1980年代で止まってるんですかね?(笑)
 
次に米国車が日本で売れない理由について。
理由は、
・日本の道路事情を考えるとサイズが大きすぎる
・購入後の維持、保守に費用がかかる(=品質が悪い)
・売れる車種はピックアップトラックとSUVぐらい(これは米国内でも)
あたりで、日本市場にあった車で品質も良くてデザインも優れている車を作ろうとしていないのだから売れないのは当然。
これは欧州市場も同じ。
アメ車が売れているのは米国以外では中国ぐらいでしょ(笑)
ダサくてでかくて品質も悪いものを「買え」と言っているんだから押し売りですね。
まずはビッグスリーに企業努力をさせるのが先でしょ。
話にもなりません。
 
最後は鉄鋼メーカーの話。
「鉄は国家なり」と言う事なんでしょうけど、世界の鉄鋼メーカーの状況をまず分かってないんでしょうかね?(笑)
2009年以降の中国での需要が落ち込み、単なる鉄「粗鋼」をメインで作っている鉄鋼メーカーは窮地に陥ってます。
現在、全世界の需要に対してメーカー全ての生産能力は約3倍と完全な供給過剰状態です。
米国(に本拠がある)メーカーを含むランキングがこちら。
 
表にある米国の鉄鋼メーカーは、「ニューコア」とかつての世界一だった「USスチール」の2社。
(あとAKスチール、スチールダイナミクス等があるようです。)
米国全体での粗鋼生産量は2社の合計より多いのは海外メーカーの工場等があるからです。
この2社の状況はと言うと、ニューコアは営業損益はなんとか黒字ですが、USスチールは5.3億ドルもの営業赤字です(2015年末)。
ドナルド・トランプはこの2社の経営状態を立て直して雇用を増やすとでも言いたいんでしょうけど、どうやって?
USスチールは高級鋼を売りとしているはずなんですが何故多額の赤字を抱えているのか。
更に直近の情報によると、最近はすこしずつ義容積は回復傾向にあるとのこと。
 
タイトルにもあるように、経営努力ではなく通商措置、つまりアンチダンピングでなんとかしているという状況だそうです。
なんともな話です、情けない。
そして高炉(鉄鉱石と石炭で鉄を作る炉)を持つメーカーが苦しんでいるそうで、理由は利払い負担やレガシーコストが経営を圧迫しているとのこと。
米国内の需要は好調ということですから、完全に経営の問題です(笑)。
高炉をもつ鉄鋼メーカーを何とかするなら、利払い負担を軽減するしか無いでしょう。
政府から低利、無金利の資金でも注入しますか?
 
まあこのあたりまでの単純な分析ができているのかどうか。
脇を固めるスタッフには事務能力も高い優秀な人物もいるでしょうから、対策を練る人材を間違えなければ何とかなる程度の話ですね。
ドナルド・トランプに理解できるかどうかは別ですが・・・(笑)
 
まあ、自動車の件は無根拠な言いがかりをつけるなというだけの話ですし、米国鉄鋼メーカーの話は勝手にやればというレベルですね。
まあ並の知識があれば自動車の件みたいな言いがかりをつけたりはしないはずなんですけど、相当無知なのかな?
 
余談。
アルセロールを敵対的買収して出来たアルセロール・ミタル(以前はミッタルと言ってましたが・・・)は現在の粗鋼生産世界一の企業です。
でも、5.4億ユーロもの営業赤字をだす傾きかけている企業です(笑)
規模にこだわって買収を続け、そして世界的な需要停滞に直面して、持てる施設、高炉が遊休状態になっているということなんでしょう。
日本の鉄鋼メーカーは、高炉の集約を進めていて、稼働率が下がりすぎない対策を進めているところです。
中国の鉄鋼メーカーも同じ課題を抱えているわけですが、こちらはうまくいくのか、かなり問題山積のようですね。
上の表にある中国鉄鋼メーカーのうち、何社が残るのやら。