朝、目が覚めると、
私は、いつも何かをあきらめようとする。
今日はもうあきらめてもいいんじゃないか?
としばらくの間考えるのだ。

しかしながら、大抵の日には、約束がある。
仕事だったり、
誰かと会う予定だったり、
何かの手続きだったり、
買い出しだったり、
美容院とか、ネイルサロンだったりも約束は約束だ。

カレンダーを見る。
今日やらないともうやれない。
そういう風に自分で仕組んでいるからだ。

今朝はいつもより少し長く「もうあきらめてもいいんじゃないか?」という誘惑と闘って、朝食後のコーヒーを呑むのをあきらめることにした。

なんてささやかなあきらめだ。

結局、簡単な朝食を食べ、
洗濯もしたし、
鉢植えの水遣りもしたし、
着ていく服にアイロンだってかけて、
そそくさと出かけた。

出かけてしまえばもう、
物事は動き出す、と決まっている。


雑多な用事を済ませてのち、
昼すぎからは、仕事の依頼を抱えて、
何年かぶりの友人に会った。

いつ会ったのが最後だっけ?なんて言いながら、
自分が今年50になったので、私は彼女が今何歳になってるのかが気になって聞いてみた。
せいぜい2、3歳下くらいだと思っていたのに、
意外と歳が離れていたことを思い出して、
今更ちょっと驚いたりした。
何年かぶりの彼女は、初めて出会ったころより、そして何年か前に最後に会ったころより、年を経て素敵な女性になっていた。
頼んだ仕事を快諾してくれたことも、
またこうして一緒にものづくりできる機会が巡ってくることも嬉しかった。

朝にあきらめたコーヒーも、
彼女と一緒に飲んだ。


動けば、いいことばかりとは限らないが、
例えば財布を失くしたりとかしたような日ですら、結局、何も起きないよりは、面白い。
と、私は思っている。

こうしたことを、朝になるといつも、忘れているってトコが、難儀なのだが。


帰りは、花屋に寄って、花を一輪選ぶ。
去年から部屋に増えた沢山の花瓶のひとつにそれを活けて、他の花瓶の水も全部交換する。
飾った花を眺めながら
今日久しぶり会った彼女のことを紙の日記に書き留める。
あと、今日も、朝のコーヒーしかあきらめなかった自分のことを褒めておく。

朝より夜の方が俄然、多幸感が大きくなっている。私が、夜が好きなのは、こういうことね。

ちょっと寝るのがもったいない気もしたりして。

こんなだから、寝て起きるとまた、色々あきらめたくなるのだとは、わかっちゃいるのだ。