日曜日。
朝起きて、
今日はなんて爽やかな秋の日だろうと思いました。

あたし、死ぬんだったらこんな日がいいなあ、
なーんてことも思いました。

あたしは、わりとすぐこういう物騒なことを、朝から溌剌と思ってたりするタチです。

しかし、今日は、来月あるボイトレ教室の朗読コンサートの稽古があるので、そんな思考はさっさと置き去りにして、家を出ましたけど。

教室には今日もいそいそとメンバーが集まって来て、ああでもない、こうでもない、と言いながら、
皆と稽古に励みました。


そして、
こんな美しい秋の日に、
お父ちゃんが
あたしのお父ちゃんが
ひょっこり、
死にました。

同じこの稽古に向かうはずだった母は
病院から呼ばれてお父ちゃんのところに駆けつけて、最期を看取りました。

稽古の間に、母から、
父危篤を告げる連絡が二度入ったけど、
あたしは「稽古終わったら行く」
と、答えました。
三度目の電話があったときには、
お父ちゃんは、
この世からいなくなってました。


そういえば、おばあちゃんが亡くなったとき、
仕事を変わってくれないかという母からの電話に、あたしは、「あたしにもおばあちゃんに会わせてよ」と、猛烈に怒ったんでした。
だからきっと母だって、今日はこっちに来なさいと言ってくれたのだろうに、
あたしは、なんて天邪鬼なんだろうなあ。

でも、お父ちゃんは、もう、
あたしに言い遺すこととか特にないだろうなと、あたしは勝手に思ってました。
ここ何回か、お父ちゃんに会いに行って、なんとなく、そう思ってました。
病院のベッドにいるお父ちゃんは、目を覚ましていても、観葉植物みたいに静かで、何にも言わなかったし、
あたしも、観葉植物を見てるときみたいに静かに、お父ちゃんを見てるだけでした。

だから、今日も
ああ、今日か
今日、お父ちゃんは逝くんだなあ、
と、稽古しながら、
静かに思ってました。

5月に父が入院して、
その頃あたしは、すごいタイミングで『お父ちゃん』なんてタイトルでお芝居をやってたりして
お父ちゃんホントに死んじゃうかもとかって、大っびらに騒いだりしました。
色んな人が気にかけてくれたり
励ましてくれました。

更には、時々、お父ちゃんが死んじゃうかもってことを忘れて、仲間とはしゃいだりもしてました。

その間もお父ちゃんはずーっと、
何にも言わずに、
病院のベッドの上にいたわけです。

そして、
こんな美しい秋の日に
ひょっこり
死んじゃった。

稽古が終わって、
急いで実家に帰ると、
ちょうど、お父ちゃんの遺体が、
運び込まれて来ました。

あっという間に綺麗に布団に寝かされて
手を組まされて、
ドライアイスに周りを囲まれて
お父ちゃん、
ポカンて口開けてたな。
あはは。

葬儀屋さんとの色んな打ち合わせをして、
とりあえず自宅に戻り、
あたしも今、ちょっとポカンとしています。

ただ、肉親のひとりが、この世からいなくなったら、
身体のどこかが少し、はっきりと、スーカスーカしているのがわかります。
今までに味わったことのない感じです。

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