近所のノウゼンカズラが散り始めた。
9月に入っても、
毎朝家の近くの緑道を自転車で通ると、
相変わらず、蝉の声が賑やかに聞こえていたのだが、
その声が、今朝は急に弱々しい。
これがこの夏最後の生き残りの蝉かもな、
と思う。
毎年同じことを言ってるが、
あたしは夏があまり得意ではない。
近年の東京の暑さはホントに酷い。
そして、
夏の暑さでバテた身体に、
秋の気配を感じるころになると、
大抵熱を出したり、寝込んだりする。
今年も一週間くらい前から、
あたしはずっとお腹を下したり、
熱が出たり、
どうにも体調のすぐれない日が続いていたのだが、
この朝は、久しぶりに、
すっきり身体が軽かった。
今年は、少しだけ秋の訪れが早い気もする。
夕方。
仕事の合間に一服していると、
陽射しが部屋の奥まで射し込んでくるようになっていることに気づく。
それと一緒に、
多分 “秋” があたしの身体にも入ってきたようだった。
“秋” と “センチメンタル” ってのは
どうもセットになってるのだろうか。
唐突に涙が出た。
あたしは最近、
滅多にひとりで泣いたりなんてしないんだがな。
小さなきっかけはあって、
それがスイッチになったことはわかるのだけれど、
それが、この涙の本来の理由ではない。
悲しいわけでも、
苦しいわけでもないのだ。
理由を探しても多分はっきりした答えは見つからない。
ただ、これは“秋” が入ってきたんだなあと思いながら、
あたしはしばらく、
涙が流れるのに任せておいた。
少し、孤独だった。
でも孤独は、
愛していたり求めていたりするときに
こうして現れるものなのだと、
あたしは知っている。
愛したり求めたりするものがあるということは、
あたしにとっての幸せに、間違いない。
例えば月に一度は満月だったり、
年に一度は名月だったり、
何年かに一度、流星群が見えたりするみたいに、
あたしが知らないだけで、
ふとこんな現象がこの身に起きる日があったりするのかもしれないな。
帰り道、ウールのストールを一枚買った。
こうやって季節が変わってゆくのも、
あたしは好きだ。