昨年12月23日のことだった。突然、高校1年生の娘が、明日クッキー作ると言い出した。今まで料理の手伝いを頼んでもいつも浮かない顔で、食べるものにもあまり興味を示さない娘がだ。
料理に興味をもたない娘について、これまでの育て方が悪かったかと、自分の育て方を何度反省したことか。
そんな娘がどうしたのかと訳を聞くと、高校でお世話になった女子バレー部の先輩にあげたい!他にもみんなの為に作りたい!と言ってきた。
本当はみんなの方が本命じゃない?と思いつつ、詮索はしない。初めて家族以外の誰かのために料理を作りたいと言ったんだから、大喜びで協力することにした。
ところがその1時間後、
「やっぱやめる。」
と言い出した。
「なんで?」
「買った方がおいしいし。見た目綺麗だし。」
娘は、普段からちょっと諦めぐせの傾向があるので、諦めさせたくなかった。
「あのね、自分で決めたのにやめるの、良くないよ。自分でやるって言ったんだからやりなさい。」
「…わかったよ。」
学校帰りに材料を買ってきて、クリスマス・イブの夜にクッキーを焼くことになった。
ところが次の日、娘は部活で遅くなり、材料は買ったものの、半泣きのような顔で帰ってきた。
「間に合わないよ。」
諦めさせたくなかった。
「諦めないの!明日まで時間はある。」
夕飯の後からクッキー作りを始めることにした。クッキーの生地を伸ばすのだけは手伝った。私が生地を伸ばし、その間に娘が型抜きをした。飾り付け、焼くのは娘がやった。結局、全部焼き上がったのは、午前1時半までかかったが、70人分のクッキーを焼きあげた。
次の日、娘は帰ってくるなり、
「私ってちょー天才!あっという間に全部なくなった。みんなうまいって!」
やれやれ、やめるなんて言ってたのは、誰だっけ?。
でも料理が娘の何かを変えたのは間違いない。
人を喜ばす為に行動した娘を、ちょっと誇りに思えたクリスマスだった。