先週末、鹿児島と福岡へ旅して来た。
楽しかった。
本当に楽しかった。

今年の5月に書いた「385のここに住みたい③」で、私は秋に鹿児島へ旅行に行きたいと書いた。
忘れずにいましたよ、鹿児島のことを。
本当に鹿児島に行けて良かった。

鹿児島でのお楽しみは、鹿児島空港でイームズチェアを堪能することから始まった。
鹿児島に飛行機が降り立ち、到着ロビーに到着すると、目に飛び込んでくるのは、黄色やオレンジ、ボルドーの色をしたイームズチェア。
空港自体は至って普通のデザインなのに、なぜこんなにも沢山のイームズチェアが置いてあるのか。
イームズチェアがある鹿児島空港。
羨ましい限り。
新潟には剣持勇のランタンチェアを造っている会社がある。
新潟空港にランタンチェアが置いてあったら、どんなに素敵かと思ってしまった。

鹿児島空港から天文館へ向かう途中、雨が降ってきた。
天気予報では午前と夕方に雨となっていた為、午後の晴れ間に桜島が見えるかなと期待していたが、一日中雨、雨、雨。
鹿児島と言えば桜島なのに、桜島を見ることができなかった悲しさたるや。
そんな雨の中、天文館に着いて向かった先はCoffee Innovate。
Coffee Innovateを知ったのは岡本仁さんのInstagramだった。
40年近い歴史のあるジャズ喫茶 門の閉店を惜しみ、膨大な数のレコードと音響設備を残す為にCoffee Innovateへ移設することに賛同した有志が、その移設にかかる費用をクラウドファンディングで集めたという話をされていた。
ちょうどその頃、私は色川武大の「うらおもて人生録」を読了したばかり。
「桜島を眺めて」の章で色川武大が、「鹿児島に住みつきたくなるくらい愉快な数日を過ごした、鹿児島で知り合った人たちは定職があり、ちゃんとした人たちだが、いずれもジャズ狂で、遊び好きで友情に厚く、素敵な人たちだ」と述べていた。
もしかして、色川武大はジャズ喫茶 門を訪れていたのではないだろうか。
または色川武大を世話したジャズ好きのタクシーの運転手がジャズ喫茶 門に通っていたのではないだろうか。
一見普通な人たちが、ジャズ好きで遊び好きで友情に厚く素敵な人たちって!?
まさにジャズ喫茶 門のレコードや音響設備を残そうとした人たちのようではないか。
そんな思いが、私を鹿児島へ、Coffee Innovateへ向かわせた。
Coffee Innovateの店内に入ると、まず壁に飾られたレコードが目に飛び込んでくる。
私が訪れた時は女性ボーカリストがテーマだったようだ。
取り分け外国の女性ボーカリストたちの中で異彩を放っていたのが、中本マリのsomething blueのジャケット。
アニタ・オデイやサラ・ヴォーン等に負けじ劣らず、存在感があった。
反対側の壁には、ジャズ喫茶 門から引き継がれたレコードが一面に陳列されていた。
入り口入って右側にアンプやターンテーブル等の棚があり、入り口入って左側にアルテックのスピーカーが陳列されていた。
アルテックのスピーカーの脇に飾られていたのはマイルス・デイヴィスの巨大ポスター。
店内でSo Whatが流れる。
ポスターを見ていると、マイルスが、私の目の前で、静かにトランペットを吹いてくれているような気分になった。
そうだ、珈琲についても述べておかなければならない。
私が頼んだのは本日のコーヒー。
この日はインドネシアの豆だった。
口に含んだ途端、チョコレートのような甘い風味が口の中にパーッと広がり、後から程よいコクと苦味が広がる。
よく珈琲の味の表現で「チョコレートのような」なんて例えられることがあるが、今までそんな味を感じたことがなかった。
初めて感じたチョコレートのような味に、私はいたく感動してしまったのである。

Coffee Innovateを出た後は鹿児島近代文学館や照国神社や天文館周辺の洋服や雑貨などを扱うショップを見て回った。
天文館で一際目を引いたのは、マルヤガーデンズ。
壁一面が緑の蔦に覆われている。
マルヤガーデンズは元三越鹿児島店。
三越が経営不振で閉店した後、三越の前身である丸屋がD&DEPARTMENTに全館の総合プロデュースを依頼し、リニューアルオープンさせたのだそう。
新潟の三越も閉店が決まったばかりだから、マルヤガーデンズの運営について興味を持った。
D&DEPARTMENTを覗いたら、鹿児島のコーナーに、今回時間がなくて訪ねるのを諦めていた、しょうぶ学園の作品や沈壽官の器などが並んでいた。
そう言えば、日が沈む直前にGOOD NEIGHBORs
を訪れたのだが、ここでも、海外セレクトされた作品と一緒に、しょうぶ学園や沈壽官の他、鹿児島の作家の作品が並んでいた。
とても街を挙げてクリエイターを応援し、盛り上げている感じがした。
GOOD NEIGHBORsで買い物をした後、お茶をしていくことにした。
デザートのメニューの中にMOKUのケーキの文字を発見!
なぜこんなに喜ぶかと言うと、MOKUのケーキを諦めていたから。
実は、照国神社周辺を散策していた時にYANO CAKE TEN MOKUを発見していたのだ。
MOKUと言えばミントブラウニーズ。
「ぼくの鹿児島案内。」で岡本仁さんや福田里香さんが美味しいと言っていた。
鹿児島へ行ったら絶対食べたいと思っていたのだが、本を何度も読んでいたはずなのに、私の頭の中は、「MOKU=ミントブラウニーズ=美味しい=絶対食べる」にしかなっていなかったようで、テイクアウト専門のお店だったことを見落としていた。
食い意地をはるとこうなるのだ。
明日は福岡へ行くし、この後も鹿児島市内を散策するから、持ち帰りは無理だと諦めてしまった。
そんな中、そんな中、GOOD NEIGHBORsでMOKUのケーキが食べられると知り、この後すぐ飲みに行くにも関わらず、MOKUのケーキを注文した。
この日のケーキは、サツマイモとレーズンのケーキだった。
サツマイモがぎっしり詰まった、ラムレーズンが程よく効いたケーキ。
表面にはホワイトチョコがコーティングされていた。
サツマイモの優しい甘さが堪能できる美味しいケーキだった。

GOOD NEIGHBORsを出た後、向かった先は、鹿児島中央駅にあるアミュプラザ。
目的は観覧車アミュラン。
雨で桜島も見れず、せめて鹿児島の夜景を見て帰ろうとアミュランに向かったのだ。
やはり雨で夜景はよく見えなかったが、この日にちょうどアミュプラザの広場でクリスマスイルミネーションの点灯式があり、地元の人達に混じってキラキラ輝くイルミネーションを楽しんだ。
次に向かったのは、「ハナキ」。
鹿児島に来て手に入れたフリーペーパー「Judd」に「ハナキ」が紹介されていたのだ。
上海帰りの店主が作る中華に、地元食材を使った料理を出すお店。
予約しないと入れない人気店らしい。
「ハナキ」はどの料理も美味しかったが、特に人気の麻婆豆腐は花椒が効いて美味しかった。
この「ハナキ」で私と友人はとても愉快な時間を過ごした。
私達の隣のテーブルの看護学生グループが話しかけてきて、私達の更に奥のテーブルのお客まで巻き込んで、記念撮影大会になった。
看護学生の彼女達は、一度社会人になってから看護士を目指して学校に通っているそうだ。
お子さんのいる看護学生もいた。
私達と話したくて話したくて、うずうずしているようだった。
皆、勉強が大変などと言いつつも、目をキラキラさせて語っていた。
私達の更に奥のテーブルの方達は、国体などで新潟に来たことがあるそうで、ビックスワン(サッカーや陸上競技が行われる施設)も知っていた。
看護学生達のように、直ぐに隣の人に話しかける人は鹿児島でも稀と言っていたが、そうでもないのではないか、と思っている。
天文館から鹿児島中央駅へ市電で向かう際、行き先を間違えて乗ってしまい、乗り換えする際にバタバタしていた私達に、ご年配の女性がサッと「こっちですよ」と優しい笑顔で教えてくれた。
文学館のスタッフも、行く先々のショップのスタッフも、皆優しい笑顔で対応してくれた。
色川武大も言っていた、一見普通の人たちだが、遊び好きで友情に厚くて素敵な人たち、というのがわかる気がした。

鹿児島では、最近新潟ではあまり見かけなくなったフリーペーパーやフライヤーが行く先々に置いてあった。
「OWL」でもらった「#ash 11」。
11/23から開催のサツマ デザイン&クラフトフェアについての内容だったのだが、11/23からだと行けないと思い、よく読まなかったことを後悔した。
今頃になって、じっくり読み返してみたら、行きたかったけれど、見つけられなかったお店が載っていたり、全国誌には載っていない、私の知らない素敵なお店がいっぱい掲載されていた。
そして鹿児島は、こんなにもデザインやクラフトが盛んな街だったのかと驚いた。
東京とは違う独自の文化が形成されている。
更に鹿児島の街への興味が深まる。
行きたかったけれども行けなかったお店が沢山ある。
桜島も雨で見られなかった。
また鹿児島に行くしかない。
また鹿児島に行きたい。
そんな風に思った旅だった。

✱鹿児島についてが長くなってしまった為、後日福岡について続編を投稿致します。
Coffee Innovateの店内①。
Coffee Innovateの店内②。
Coffee Innovateの店内③。
マルヤガーデンズ。
GOOD NEIGHBORs。
MOKUのケーキと紅茶。
観覧車アミュラン。
アミュプラザの広場のクリスマスイルミネーション。
鹿児島で手に入れたashとJudd。