(五)①特定秘密保護法・国家安全保障特別委員会(2013/11/22

 先の国会でもっとも社会の注目を浴びることになった、国家安全保障に関する特別委員会にも、委員として審議に参加しました。


同委員会で扱ったのは①国家安全保障問題につき総理を中心に機動的に審議する「4大臣会合」の創設などを盛り込んだ「日本版NSC設置法案」[1] と、②「特定秘密保護法案」の2法案です。後者は、国の安全保障に関する情報のうち特に秘匿が必要な機密の漏えいを防止し、国や国民の安全を確保するための法案です。

 特別委員会は118日に設置。NSC設置法案は、民主党など一部の野党も必要性を認識していたことから、参議院本会議で1127日、賛成多数で成立しました。

 他方、特定秘密保護法案は衆議院で自民、公明、維新、みんなの4党共同の修正が加えられ、1126日に可決、翌日に参議院に送られてきました。会期末まであと1週間あまりという厳しい日程となったため、参議院ではほぼ連日、委員会審議が組まれました。

私は、1122日、両法案について質問をしました。

当時、衆議院で審議されていた特定秘密保護法案については、何が特定秘密なのかが明らかにされずに起訴され、また、裁判の場でも特定秘密の内容が明らかにならないのは公開裁判を求める憲法の要請にそぐわないのではないかという不安の声が寄せられていました。

そこで、法務省に「特定秘密の内容を明らかにしないでも有罪立証が可能である過去の判例の存在」の有無とその概要について質問しました。

 「秘密の内容自体を明らかにしなくても、内容以外の事柄を明らかにすることによってその秘密性を立証できる」こと、「実際にその方法で立証され有罪判決が下された例として、いわゆる外務省のスパイ事件」が昭和44年にあることの確認を致しました[2]

 さらに、毎日新聞沖縄返還交渉秘密電信文漏えい事件の最高裁決定が[3] 、出版または報道の業務に従事する者の取材行為について規定した特定秘密保護法案第222項の「著しく不当な方法」のたたき台になった経緯から[4] 、取材活動と法案の関係について下記のような質問をしました。


「国民の知る権利、報道の自由とこれを支える取材の自由、これらと国家秘密に関する有名な事件がございます。委員の各位の皆様御案内のとおり、毎日新聞沖縄返還交渉秘密電信文漏えい事件であります。男性ジャーナリストが日米両政府間の極秘電信文を外務省の審議官付き女性事務官から入手した事件でありますけれども、その行為が国家公務員に対する秘密漏えいの唆しだとされ、男性ジャーナリストが有罪判決を受けた有名な事件であります。昨日、被告人となった西山氏が本委員会に参考人として出席されたところでもございます。
 この事件で、最高裁の決定は次のように述べております。従前それほど親交があったわけでもなく、また愛情を寄せていたものでもない外務省の事務官に対し、かなり強引に同女と肉体関係を持ち、再び肉体関係を持った直後に秘密文書の持ち出しを依頼し、その後も同女との関係を継続し、依頼を拒み難い心理状態になったのに乗じ、以後十数回にわたり秘密文書の持ち出しをさせた、その後もう彼女を利用する必要がなくなると、他人行儀となり、関係も立ち消えにしたと事実認定をしております。
 その上で、最高裁決定は、こうした行為が女性事務官の個人としての人格の尊厳を著しくじゅうりんしたもの、社会観念上到底是認できないとして、正当な取材活動ではないとして有罪判決を維持したわけでございます。

この最高裁の決定に対しては、相手が成人した女性であること、そして公務員であることなどから批判もございます。この点は今日はおくといたしまして、今回の特定秘密保護法案との関係でお聞きいたします。
 ジャーナリストが、情報を得るためだけに特定秘密を持つ者と情交等を結ぶようなこともなく、純粋に秘密を公開することが国民のためになると特定秘密を開示するよう何度も執拗に説得、誘導した末、特定秘密を聞き出した場合、つまりジャーナリストが単に公務員に対して粘り強く開示を説得するだけでは処罰されないということでよろしいでしょうか。政府参考人、御確認ください」。


 政府側からは、情報を得るためだけに特定秘密を持つ者と情交等を結ぶようなこともなく、純粋に秘密を公開することが国民のためになると特定秘密を開示するよう何度も執拗に説得、誘導した末、特定秘密を聞き出す「行為は正当な取材行為であり、特定秘密の漏えいの教唆には当たらない」との回答を得ました。この回答はあまりに当然のことではありますが、同法案が取材の自由を不当に制約するとの懸念が誇大に喧伝されていたことから、確認のために質問したのです。



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[1] 「安全保障会議設置法等の一部を改正する法律案」



[2]  東京高等裁判所 昭和44318日高刑221101 東高刑時報20342



[3]  最高裁昭和53531日第1小法廷決定(刑集323457頁,判時88717頁,判タ36396頁)



[4]  「出版又は報道の業務に従事する者の取材行為については、専ら公益を図る目的を有し、かつ、法令違反又は著しく不当な方法によるものと認められない限りは、これを正当な業務による行為とするものとする。」