(四)貸金業法の見直しへ・財政金融委員会
2013/11/28

 1128日の財政金融委員会が2回目の質問の場となりました。麻生金融担当大臣、警察庁の政府参考人に反社会的勢力との取引問題につき改めて質しました。

 警察庁には反社取引の解消策、いわゆる出口戦略について質問しました。サービサー(債権回収会社)が反社会的勢力該当者からの債権回収策として、債務の一部免除をしようとすると、警察当局から「反社勢力への利益供与にあたるのではないかとの懸念」を指摘されるため、債権引き受けをためらってしまうという声が寄せられており、そこで実務の悩みに対する警察庁の考えを聞きました[1]

 室城信之・警察庁刑事局組織犯罪対策部長からは、債務の一部免除が暴力団排除条例における暴力団員等への利益供与に当たるかどうかにつき、債務の一部免除という「そのことをもって直ちに暴力団員等への利益供与に当たるとは考えてはおりません」とケースバイケースである旨の回答でした。

さらに不適切な利益供与に当たらない場合を類型化できないかを問うと、免除額とその理由等が不適切な利益供与か否かの判断要素になる旨の回答でした。

   貸金業法の規制見直しへ

続いて、麻生金融担当大臣には、かねてより関心を持っていた「グループ内金融と貸金業法の問題」を質しました。

貸金業法は、業として金銭の貸付け等を営もうとする者に登録義務を課しています。一方で、「従業者に対する貸付け」については登録義務の適用除外としています。

そこで企業グループ内の貸付けに登録義務を課さず放置した場合にどのような弊害があるのか聞きました。麻生金融担当大臣は節税の横行を懸念しているとの回答でした[2] 。これに対し、私は節税対策を講じることは貸金業法の目的ではないと述べました。

 現行の貸金業法は過剰な規制であり、柔軟で機動的な企業グループ内の資金循環を阻害しています。

私は麻生大臣に対して連結グループ企業内の貸付け、少なくとも下記のようなケースは貸金業法の登録義務の適用除外であることを明確にすべきだ提案しました。

会社法施行規則三条にある議決権所有割合が40%以上で、実質基準に基づく会社法上の子会社と親会社間の貸付け

合弁会社の株主から合弁会社への貸付け

完全子会社ではないけれども、共に子会社である兄弟会社間の貸付け等

 麻生大臣からは「資金管理の実態というものをちょっともう少し十分によく把握した上」で、「この問題については検討をしていく必要があろうと思っております」と、検討の必要性を認める回答がありました[3]


 この規制については産業界や法律家からかねて緩和要望があり、私は当選直後から金融庁に対し見直しを求めておりました。そして1213日、財務省と金融庁が事務局を務める「金融・資本市場活性化有識者会合」がとりまとめた報告書において、「本邦企業の資金管理の効率化の観点からは、本邦企業の海外拠点を含めた企業グループ全体としての最適な資金管理(キャッシュマネジメント)システムの構築に資するよう、規制の見直しを検討することが必要である」との指摘がなされることとなりました。

これを受け、金融庁では貸金業法の政令を見直す方針を固めました。具体的には①「実質子会社」関係でつながる企業グループ内(孫会社、兄弟会社等を含む)融資②合弁会社に対する出資者による貸し付けは他の出資者の了解があれば少数の出資者(一定割合以上の出資は必要)の融資につき、貸金業登録を不要とするものと思われます。

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[1]  第185回平成251128日参議院財政金融委員会議事録05号 暴力団員等を債務者とする債権回収の問題で、クレジットによる分割払などの場合、そもそも一括払いできないから分割払にしていることを考えると反社会的勢力だと分かって一括請求をしても、支払ってもらえない。そこで、債権回収の費用対効果を考え、一部免除による債権回収を提案すると、一部免除が反社会的勢力への不適切な利益供与になるとの指摘がある。債務の一部免除が不適切な利益供与だと認定されると、事業者としては、反社会的勢力の債務者が正常な支払をしている場合には、関係を遮断せずにそのまま放置して完済してもらうということを選択するインセンティブが働くのではないかとの疑問が生じると指摘した。

[2]  第185回平成251128日参議院財政金融委員会議事録05号 麻生金融担当大臣の発言「いわゆる同じ企業内、グループ傘下の子会社、孫会社等々を含めまして基本的にこの貸金業法を求めてきた背景というのは、これは企業内の貸付けであったとしても、これは、こっちはもうかったからちょっとこっちを取り上げてと、いろいろな形でこれは利用方法があります。もうかっている会社の方を多く渡して、もうかっていない方に金を融通してやるというところで、それで税を、こちらの方が節税できる等々、いろんなやり方が、可能性があるんでして、そういった意味からいきますと、これはやり方によってはいろいろ問題が出てくる可能性がありますんで、貸金業者の登録というのを基本的に求めているということであります」


[3]  第185回平成251128日参議院財政金融委員会議事録05号 麻生金融担当大臣の発言「いずれにいたしましても、企業グループ内での資金の移動というか、資金の管理の効率化という観点からいけば、企業経営の側としては今言ったような御指摘がいろいろな形で御要望として上がっているということは私らとしてもよく承知をいたしております。いずれにしても、この資金管理の実態というものをちょっともう少し十分によく把握した上、かつ、BEPSを今OECDでやってもおりますので、これとも関係をいたしますので、そういったものを含めた上で、私どもとして少々この問題については検討をしていく必要があろうと思っております。」