先の財政金融委員会での質問とも関連しますが、党・政務調査会の法務部会では、先の国会で政府が国会提出を予定していた会社法改正案の与党審査に深くかかわりました[1] 。
私は部会において、コーポレート・ガバナンス強化のため、上場会社などに対する「複数の独立社外取締役の選任義務付け」を強く主張しました。私の考えは以下の通りです。
① 日本の上場企業などは「選択と集中」戦略をさらに加速させる必要がある。過去を断ち切れない、生え抜きばかりの、馴れ合い取締役会ではダメで、「外の目」を入れるべきである。
② 社外取締役を選任して、業績が悪化したという話を日本で聞いたことがない。
③ 「義務付けられると、優秀な社外取締役の候補者がいないので困る」という話も耳にするが、そうした主張は説得力がない。大会社で複数の社外監査役が既に義務付けられていることと整合性がとれない主張であり、また、新設される監査等委員会設置会社に移行すれば大きな問題はない。
④ 規制強化との批判は一理ある。社外取締役がいなくてもりっぱな業績をあげ続けている企業にとって、義務付けは確かに、はた迷惑。ただ、産業界全体の業績を底上げするための政策ということで、迷惑を受ける企業には大変申し訳ないが、規制を甘受いただきたい。
結果的に、社外取締役選任の義務化は経済界の強い反対もあって、政府原案のとおり見送られました。ただ、考えを同じくする複数の議員と手を組み、社外取締役の選任を強力に促す方向で政府原案を修正いただきました。
具体的には社外取締役を置かない場合には、その理由を取締役に定時株主総会で説明させる第327条の2の創設[2] 、付則第25条で施行後2年後に再検討し必要な場合には「社外取締役を置くことの義務付けなど所要の措置を講ずる」ことを追記することになりました[3] 。修正案の原案は「施行後3年後」の見直しでしたが、私は1年後を主張し、2年後の見直しで決着しました。
また、私は関与していませんが、法務省令において①事業報告における開示[4] ②株主総会参考書類における開示の際に、社外取締役を置いていない場合には置くことが「相当でない理由」を記載し、社外監査役が2名以上あることのみをもって「相当でない理由」とできないことを規定することになりました[5] 。
会社法改正案は先の国会では成立せず、衆議院で閉会中審査扱いとなりました。2014年の通常国会で実際の審議が行われるものとみられます。
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[1] 主な概要は①監査等委員会設置会社制度の創設、②社外取締役等の要件等を厳格化、③株式会社の完全親会社の株主による代表訴訟制度の創設、④株主による組織再編等の差止請求制度の拡充等 http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index_gian.htm
[2] 327条の2 事業年度の末日において監査役会設置会社(公開会社であり、かつ、大会社であるものに限る。)であって金融商品取引法第24条第1項の規定によりその発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないものが社外取締役を置いていない場合には、取締役は、当該事業年度に関する定時株主総会において、社外取締役を置くことが相当でない理由を説明しなければならない。
[3] 付則第25条 政府は、この法律の施行後2年を経過した場合において、社外取締役の選任状況その他の社会経済情勢の変化等を勘案し、企業統治に係る制度の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて、社外取締役を置くことの義務付け等所要の措置を講ずるものとする。
[4] 法務省令において、公開・大会社である監査役会設置会社であって株式について有価証券報告書提出義務を負う株式会社が社外取締役を置いていない場合には、「社外取締役を置くことが相当でない理由」を事業報告の記載事項とする旨を定めるにあたって、その事業報告における記載に関し、概要、以下の事項を定めることとする。
* 「相当でない理由」は、個々の株式会社の各事業年度における事情に応じて記載しなければならないこと。
* 社外監査役が2名以上あることのみをもって「相当でない理由」とすることはできないこと
[5] 株主総会参考書類の記載事項を定める法務省令中の適切な場所に、概要、以下の内容の規定を追加することとする。
* 公開・大会社である監査役会設置会社であって株式についての有価証券報告書提出義務を負う株式会社が、社外取締役を置いていない場合であって、社外取締役の候補者を含まない取締役の選任議案を株主総会に提出するときは、「社外取締役を置くことが相当でない理由」を説明しなければならないこと。
* 「相当でない理由」は、個々の株式会社の当該時点における事情に応じて記載しなければならないこと。
* 社外監査役が2名以上あることのみをもって「相当でない理由」とすることはできないこと。