ゴールデンウィークの最終日、
ぼくがある程度大きくなったとき
母はこう言いました。
「しゅうじには実は妹がいたんだよ」
「生まれていたら男の子でも女の子でも大丈夫なように ひろみ という名前にする予定だったの。
生まれていたら、おかあさんは女の子だったと思うの。」
ぼくが小学校6年生の時のことです。
「茶色の小瓶」という歌を先生がオルガンで弾き、それに合わせてぼくらは演奏していました。音楽室はソプラノリコーダーの音でいっぱい。
そこに、音楽室のドアがスーッと開き、ひとりの女の子が部屋に入ってきたのです。
「あれ、あの女の子教室間違ったのかな?」
と思いつつ、みんなに確認しようとキョロキョロと見渡しました。なのに、みんな一生懸命演奏をしていて気付いている人なんかひとりもいない。
「あれ?もしかして・・・
みんな気づいていない?」
そう思った瞬間
「あ、ひろみだ!!」
根拠なんて・・・何ひとつない。
直感とかそういうもの?
でも、ぼくの中でそう理解したのです。
最初は毎日それから少しずつ間隔が空いて、ひろみはぼくに会いに来てくれました。
そして、中学2年の夏休み。
その日は、すごく眠くて
いつもよりも早く布団に入りました。
意識が少しずつ遠のいていきます。
静寂な部屋の中に金色のまぶしいひかりが射しこんできたのです。
「暗いはずなのに、明るい?どうして?」
目をつぶっているのに、わかるくらいの明るさ。
眠いあたまの中でも、美しくその心地よさを感じる高貴なひかり。
でも、眠くてもう目を開けることはできません。
「ねー、おにいちゃん、ねーねー」
とぼくを呼ぶ声が聞こえ、そのひかりの中から、ひろみが現われました。
「どうしたの、急に?もう今から寝るのだけども、悪いけど明日もう一度出てきてくれない?」
「今日じゃいないとダメなの。
おにいちゃんお願い」
と言ってくるのです。
「私がどんなところで暮らしているのか
観に来てほしいの」
という、ぼくの頭ではまったく理解ができないことを話してきました。だって、ぼくは生きている、そんなぼくがあの世に?眠いのに冷静に考えることができた。
しかし、まったく疑っているわけでもなかった。
妹は、ぼくの返事をにっこり笑って待っているのです。
「そうだ!ぼくは寝ているのだ。
これは夢なのだから大丈夫だ」
自分で自分に言い聞かせるように、そして久しぶりのひろみとの再会にうれしくて、身を任せることにしたのです・・・・・・