地域でパソコンを使い続ける、ということについて考えてきました。先日はそのために必要なものとして、当事者の努力と周囲の理解をあげてきました。
http://ameblo.jp/miyagiup/entry-10097486942.html

パソコン・ネット環境といったモノ(物的資源)や、ITスキルだけはなく、利用環境=「利用者本人のがんばり+周りの人のサポート」が必要という話は、わかりやすいと思います。しかし、それだけでは駄目です。本人がいくら頑張ろうとやる気を出しても、駄目な時がある。周りのサポータがいくら助けてあげたくても、駄目なときがある。

余談として、介護職と介護保険の辛さについて付け加えました。
http://ameblo.jp/miyagiup/entry-10100223516.html

この2つを合わせると、障害のある人、高齢の人が地域でパソコンを使う場合の、深刻な問題が浮かび上がります。障害者や高齢者がITを使う場合は、そのような介護職の人たちに、業務外として手伝ってもらわなければならないことがあります。つまり、彼ら彼女らの〈余裕〉によって、利用環境が決まってくる面があるわけです。

しかし、彼ら彼女らの仕事は、そこまで〈余裕〉がありません。ひとつは、すでに述べた「お金=賃金」の問題。これは人材が集まらないという「人=労働力」の問題にも繋がります。それによって導かれるのは、1人あたりの仕事の量の増加です。しかし、ケアマネさん、ヘルパーさん、職員さんが多忙を極める理由は、人が不足しているからではありません。それは見せかけの問題にすぎないんです。

今、ケアマネさんやヘルパーさんが一番忙しいのは、「書類作成」「業務報告」です。

「制度が見直されるたびに必要な書類が増えていく・・・。記録の重要性は百も承知ですが、種類も頻度もボリュームも尋常ではありません。日中は本来業務の利用者宅訪問や事業者との連携にあてたいので、記録をまとめるのは夕方以降。ここまでの量は不要と感じているので作業効率も上がらず、半ばやっつけ仕事になっています。でも、考えてみたらそこでしか評価されていないんですよね。保険者は『業務を証明するもの』の一点張りです。」(ケアマネージャー 2008年4月号:14)

他にもgoogleで検索すると、書類作成で苦しむ介護職の皆さんの嘆きが聞こえてきます。「本当にどれくらい多いのだろう?」と先日、ケアマネを例にとって「介護保険のサービスを受けるために必要な書類」を本から一式コピーして授業で配ったら、あまりの多さに肩を壊しました(実話しょぼん)。

アセスメントでの勘案事項調査項目、アセスメント情報シートからはじまり、プランニング=居宅サービスの計画書関係が最低8種類、もちろん自分でサービスに入ったらその都度ノートや報告書への記録が必要ですし、引き継ぎ情報も留めなければなりません。モニタリング(一ヶ月に一度)は義務になっていますし、もちろん給付管理も残っています。ケアカンファレンス、サービス担当者会議のための書類も。。。この前に、要介護認定(障害程度区分認定)もあったのかと思うと、クレイジーの一言。これを、利用者の数だけこなさなければならないわけです。あせる

ひとつひとつが、大変です。いちいち適用されるルール・規準は何か、それに合致しているか、合致していたらどうすればいいかを、ひとつひとつ書かなければなりません。

本当に、そんなに書類が必要なのでしょうか!? なぜ、そんなに書類が必要なのでしょうかはてなマーク

その本質的な疑問は取っておいて、“介護保険(または自立支援法)の書類主義”は、実は、福祉全体を危機に陥れています。

(1)福祉支援者を危機に陥れる
皮肉にも、介護の質を上げるためと称する一連の書類作成が、介護現場の〈余裕〉を喪失させ、結論として介護の質を著しく低下させている。

(2)利用者を危機に陥れる
サービスの許可や評価が書類上、認められるか認められないか=規準に合致しているか否かに終始してしまい、自らの多様な生活がその枠内に収められ、生きかたの〈余裕〉を喪失させる。

実はこれは、「単に書類が多い」という意味にとどまりません。サービスの分配や評価を事前に用意された規準によって行なうという、構造上の重大な欠陥の現われなのですが、それもまた今度触れたいと思います。

そして、すでに述べたように、障害者・高齢者のIT利用も、危機に陥れるのです。

(3)日常的にITを利用するために、利用者と介護者の〈余裕〉が活用されていたが、それが喪失される=パソコンを使う時間的、物的、経済的〈余裕〉が失われていく。

当事者の日常的なIT利用ほど、後回しにされ、事前に用意された規準には合致しませんからガーン

やや極端な話でしたが、じゃあ、どうしましょう?ということは言えるわけです。ここからが宮城UPの踏ん張りどころなのですが、まずは、日本の現行の福祉システムの構造的な欠陥と危機を指摘して、また今度にさせてください。