ある時、模型用の「有機溶剤」が店頭から消えたというニュースが耳に入りました。
我が家では一通りタミヤ・GSIクレオス・ガイアカラーといった各社の薄め液や溶剤を購入しているものの、余裕をもって容量の大きな商品を購入しているので、あまり頻繁な購入はしていません。
それ故に「溶剤不足」は私の使用用途においては他人事であると思っていましたが、その認識は大きな誤りであったことを後に知ることとなりました。
▲2023年に購入したIPA(イソプロピルアルコール)4L入り缶。当時の価格は2,300円程度だった。
というのも、某通販サイトから購入していた1リットル以上の有機溶剤・イソプロピルアルコール(以下”IPA”と表記)が、いつの間にか全く入手できなくなってしまったのです。
500ml入りであればまだ在庫があるようなのですが、4リットル入りでしたら1リットルあたり500円程度で入手出来ていたIPAが、500ml入りの製品で1,400円弱となっているためにざっくり見積もっても4倍以上の値上がりとなってしまいます。
これではIPAの消費量が多い光造形方式の3Dプリンタを稼働させるのも躊躇ってしまう状況であり、現在どうしたものかと手を拱いております。
調べてみると、IPAは原油から精製する石油化学製品の一種であり、昨今の中東情勢悪化に伴う供給不安の影響を受けてしまう製品とのことです。
▲Google Geminiを利用して作成した原油からIPAを精製するプロセスの解説図。
上記の図の様に、IPAを精製する方法は幾つか存在していますが、どの手法でも原料が原油であることには変わりはありません。
そして、石油からIPAを精製する過程の中で「ナフサ」という中間的な生成物が存在しますが、 こちらも供給不安が連日報道されている通りですので、最早逃げ場のない状況と言えます。
ナフサは原油から精製する事で入手する事が出来ますが、日本では海外からの輸入する割合が全体の約7割で、2024年はそのうち約76%が中東諸国からの輸入であったとの事です。
昨今の情勢を受けて輸入先を切り替える動きは既に始まってはいるものの、当面の間は価格・入手性共に安定しないものと思われます。
また、石油化学工業協会の統計では日本国内における3月のエチレンを製造する設備の稼働率が68.6%まで落ち込んでいるというデータが発表されました。
エチレンガスは輸入したバナナの追熟に用いられる事が知られており、防疫の都合上「熟する前の状態」で輸入する必要がある為に、最悪「黄色いバナナ」がスーパーの店頭から消えてしまう可能性すらあります。
IPAはこれまで安価で入手性の良い工業用アルコールとして幅広い用途で用いられて来ましたが、調べて見るほど現代の私達の生活は多様な石油化学製品によって支えられている事を痛感した次第です。
現時点ではまだスーパーの店頭からバナナが消えるといった具体的な影響は見受けられませんが、製造ラインレベルではこれまで湯水のように使用できていた石油化学製品を節約しながら生産を続ける必要があるために、お店に並ぶ量が減ってしまったりパッケージが簡素化されるといった変更はあるものと思われます。
また、その様な「潤沢に使える」ものがいざ「手軽に入手できない」ものへと変化したことを感じ取った際にまず自分の事だけ考えて買い占めに走るのではなく、今後手に入りづらくなった際の代替手段を探すといった方法で周りに迷惑を掛けずに粛々と必要なものを手に入れながら暮らしてゆきたい所です。
なお、IPAの代替となる商品として挙げられるのがホームセンター等に売っている自動車用の「水抜き剤」となりますが、例に漏れず値段が上がっています。
そして1本あたり220ml程度しか入っていないため3Dプリント品の洗浄に用いるためには相当量を購入する必要があり、それはそれでボトルから移し替える手間なども考えるといざという時の「最終手段」として考えるのが良さそうです。
◯引用元
日本石油工業会Webサイト






















