俺今日ここでしんじゃうのかな。
ねぇ。しんじゃうのかな?
って、本気で思った。まじでね。
電話は繋がらない。ラインは既読にならない。開いてる窓はない。寝不足の上に暑い。飲み物もない。近くに自販機らしきものもない。コンビニもない。
帰ればいいんだよ。帰るまでしなくてもさ、駅まで戻ればさすがに自販機ぐらいあるでしょ。
でも。
寝てるだけで家に居るのかもしれないじゃん。
ちょっとだけどこかに行ってるのかもしれないじゃん。
もう戻って来るかもしれないじゃん。
って、思ったら。動けなくて。
日陰には居た。でも、暑い。どんどん気温が上がってってる。汗が出る。なのに補給する水分がない。
あとちょっと待って、それでもダメなら、居ないなら、戻って来ないならとりあえず駅に行こうって、日陰に座ってた。
あと少しあと少しが、5分5分5分の足し算でどんどん長い。長くなって。
頭、くらくらしてきた。
これって噂の流行りの熱中症?
俺、流行には疎いのに。のっちゃった?のっかっちゃった?
気持ち悪い気がする。頭も痛くなってきた。
もう、動けないかも。動きたくない。無理。
智さん。
何してんだろ。俺。
何してんの。アンタ。
腹たつとか通り越して、もう笑っちゃうよね。
会いたくて会いたくて、終業式昨日で今日来いってさ。
ちょっとはアンタも、少しでも早く俺に会いたいってこと?って、バカみたいに浮かれて。俺。
空回りなの?結局。
アンタはそうでもないの?なかったの?
玄関の横。
座ってたけど、座ってるのもツラくて、座ってもいられなくて転がった。
しんじゃうのかな。このまま。アンタに会えないまま。
どこに居るんだよ。せっかく来たのに。来てやったのに。何しにって、アンタにヤ られにだよ。なのに。
「和⁉︎」
頭ぐらぐら。ずっきんずっきん。気持ち悪い。ぐるぐる。
「大丈夫か⁉︎和⁉︎」
声。と。アンタの。
伸びて来る手。俺に。
ああ。
会いたかった。会いたかったよ。すごい会いたかった。会いたくて。会いたくて。
「………何で居ないんだよ。ばーか」
黒いアンタが、ひょいって俺を。
抱き上げた。
「ごめん」
よかった。
しななかった。会えた。
黒いアンタの首に、汗だくのアンタの首に、俺は腕を絡めた。