「………潤くん、どうしたんですか。すごいモテモテじゃないですか」
「………」
俺が来て少ししてから、相葉くんがバイトをしていた、その倉庫に住んでいた店の店長である大野さんと一緒に来たニノ。
………が、俺を見て笑いを堪えながら言った。
昼食の準備をしていた相葉くんが向こうで、おーちゃん店長久しぶりーってきゃっきゃしてる。
翔さんは相葉くんの手伝いをしてて、俺は。
俺は、双子の子守りをしていた。
さっき翔さんが相葉くんに言ってたけど、自慢じゃないけど俺は子どもに怖がられる。動物もだけど、こわがられる。
まあ顔だよ。この顔。
だから正直、ここに来るのも躊躇ってた。
相葉くんにフラれ、その子どもにまで泣かれたら。
「ジャングルジムならぬジャングル潤?」
「………」
最初は環だけだった。
雅月を抱っこする翔さんにお土産の紙袋を渡して、環と遊んでた。いや、遊ばれてた?
じゅーって言いながら俺の顔をペタペタ触って、何がツボったのか笑って、それがかわいくて俺も環のぷにぷにほっぺたを触ってって。非常におとなしく遊んでいた。
そしたら雅月もこっちに来て、ソファによじ登って俺んとこ来て、同じようにじゅーって言いながらペタペタ触ってきて、けらけら笑って。
ソファから落ちたら危ないって、ラグの上に降りたが最後。
双子がふたりして俺によじ登り始めて、ニノの言う通り俺はジャングルジム状態。
双子が落ちないよう、俺によじ登る双子を支えるので精一杯。
相葉くんに会うしって、セットしてきた髪の毛はぼさぼさ、新調した服はよれよれ。
双子の体温が高くて汗びっしょり。
翔さんのあの工事現場スタイルが、実はすごい子育てにマッチしたスタイルなんだと身をもって知った。
冷ややかに見てごめん、翔さん。
育児舐めてた。双子舐めてた。あんたすげぇよ。天才だよ。
双子の重さに耐えきれず、プラス俺の上からでも落ちたら痛いよなってことで、俺は双子を抱えながらごろんってラグの上に仰向けに転がった。
転がった勢いが楽しかったのか、双子は爆笑。
立てた膝の上を目指す雅月と、俺の顔狙いの環。
「本当すごいね、潤くん」
「かわってくれ、ニノー」
「え?やだよ。無理無理」
かわいい。
確かにかわいい。
さすが相葉くんの血を引いてるだけある。翔さんも何気にイケメンだし。
美人とイケメンの子どもは、やっぱり美人でイケメンなんだなって思う。
赤っぽい環と青っぽい雅月。
かわいいだけじゃなく神秘的で、ふたりで笑い合ってる姿は微笑ましい。
でも、子どもの相手をほぼほぼしたことがない俺は。俺には。
「雅月、環、ご飯こっちに運ぶから気をつけろよ。触るなよ」
「あーい」×2。
「潤もうちょい頼む。ニノも。多分大丈夫だけど、ひっくり返さないよう見てて」
「………まじか」
「分かりました」
「すげぇ助かる。メシの準備が超スムーズ」
大きめの皿をふたつ、これまた何人用なんだよっていう大きさのローテーブルに置いて、またキッチンに戻っていく翔さん。
人って変われば変わるもんなんだな。
『あの』翔さんが。
そのまま視線で追いかければ、対面キッチンの向こう側で何やら話してる櫻井夫婦。
幸せそうに、それはそれはキレイに笑う相葉くん。
幸せそうに、それはそれはでれでれしてる翔さん。
未練というほど強い感情があるのではない。
………のか?俺。
「すごいことになってるね、松本くん」
「………ども」
のんびりした口調で大野さんに言われて、ジャングルジム状態の自分に我にかえる。
相葉くんが幸せならいいんだよ。
このために、あの笑顔のためにアタックやめて散ったんだろ?
なら本望だろ?
「じゅー」
俺の上に乗っかったまま、服触ったりボタン触ったりしてた環が、俺の頬をまたむにゅっと潰しに来た。
「だからじゅん」
「じゅー」
「え、それ潤くん呼んでるの?」
「そう」
「………じゅう」
ニノと大野さんが笑って、雅月が膝の辺りでもぞもぞして、環が全力で口を尖らせてて、櫻井夫婦は仲良しで。
すげぇ平和だなあって、思った。
次で………終わる?終わらない?だれか教えて(泣)