ザ・外食記録 ~今日も閲覧ありがとう~

三谷幸喜さん脚本
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脚本家 久部三成 :菅田将暉
劇団のスタッフ トンちゃん:富田望生
演出家 黒崎:小澤雄太
無料案内所のおばば:菊地凛子
ダンサー いざなぎダンカン :小池栄子
ダンサー パトラ鈴木:アンミカ
ダンサー 毛脛モネ:秋元才加
ダンサー・兼バー・ペログリーズのママ リカ:二階堂ふみ
バーのウエイター・ケント:松田慎也
モネの息子・朝雄:佐藤大空
放送作家 蓬莱省吾 :神木隆之介
WS劇場のオーナー ジェジー才賀:シルビア・グラブ
運転手兼秘書 乱士郎:佳久耀
支配人 浅野大門:野添義弘
妻 フレ:長野里美
スタッフ 伴工作:野間口 徹
芸人はるお:大水洋介(ラバーガール)
芸人フォルモン :西村瑞樹(バイきんぐ)
客引き うる爺:井上順
取り立て屋 トニー安藤:市原隼人
受付兼チケットもぎり 毛利里奈:福井夏
ジャズ喫茶の店員 仮歯:ひょうろく
ジャズ喫茶のマスター 風呂須太郎:小林薫
神社の神主 論平: 坂東彌十郎
巫女 樹里:浜辺美波
是尾礼三郎:浅野和之
井上ひさし:三谷幸喜
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第11話
おばば1人占いをしながら「ん?あの男の運気が下がっておるぞ」
WS劇場の演目は『ハムレット』
レアティーズを演じた大瀬の人気が沸騰していました。
劇作家の井上ひさしさんも観に来て、絶賛してくれました。
記者が大瀬、アンケートでも大瀬が大人気で、久部がやきもちを焼くほど。
蓬莱「彼には華がありますからね」
是尾は控室でボヤいてました「レアティーズが目立ちすぎだ。それにオフィーリアの大根ぶり」
「(久部と特別な関係だと聞かされて)ん?それなら文句はない。演出家の特権だ、いつの時代も」
久部は、不振に悩むリカをなだめました。
フォルモンをパトラを誘い「来週はお笑いスター誕生に出るんだ」
モネ「ミスター梅介によろしく」
大瀬が誘ったのですが、モネはことごとく都合悪く断りました。
モネ「小学生の親も忙しいのよ。私とお付き合いするって、こういうことだから」
大瀬「わかってますよ」
モネ「わかってないような背中だったから」
舞台で、久部とリカは2人で稽古を始めました。
リカが「私にはムリ」イライラが溜まって、やめてしまいました。
久部「オフィーリアに大事なのは狂気です。リカさんにはそれがある」
さらに久部は朝雄の水彩画作品を汚してしまいました。
久部はしらばっくれてました。
ぬぐったハンカチが衣装のポケットに入っていました。
久部「どういうことだ、大瀬君」
モネ「最っ低」
久部「これだけは忘れるな。自分を見失わないこと。もっと広い意味で理解してほしい」
大瀬「ご忠告ありがとうございます」
樹里「なんだか最近ぎくしゃくしている」
蓬莱「環境の変化にみんな慣れていないのかも。集団というものは目的がわからず、やみくもに走っている時が、一番盛り上がるものだから」
樹里「そうなのかなぁ」
是尾はベロンベロンに酔っぱらて寝転んでました。
先日もファンに誘われて飲んだ(黒崎自身が誘っていました)。
久部「今度酒を飲んだら、劇場を最後にするって約束でしたよね。代役を立てる。あんたは何度でも同じ過ちを繰り返す。約束は約束です。みんなには体調がすぐれないので降板交番と言うことにします。支払いは僕がしますので、請求書を持って来てください」
伴に「カーテンコールの順番を変えようと思います。是尾さんを最後に」
蓬莱が「リカさんのことで・・・。オフィーリアは別の人にやってもらった方が。久部さんにとって特別な存在なのはわかっています。みんな知っていますよ。恥ずかしがらないでください。もし『ハムレット』をもっと成功させたいのなら、ここは大きな決断をしてください」
久部「分かった」
蓬莱「劇団のため、劇場のため、何よりもリカさんのため」
久部「分かったって、言っているだろ」
樹里「大瀬さんの衣装にあったというハンカチ、これって久部さんのですよね。私が久部さんにあげたやつです。気になって伴さんに見せてもらったの」
久部「事故だったんだ」
樹里「刑事ドラマの犯人か」
久部「ちょっと絵を直してあげようと思っただけで、ホントに事故だったんだ」
樹里「どうして大瀬さんに罪をなすり付けたんですか」
久部「彼がちょっと天狗になっていたから」
樹里「大瀬さん、あれから全然元気ないです」
久部「いい薬になったんじゃないか」
樹里「久部さん、私が怒っているのは、どんなときもいい作品をつくるのが生きがいだったんじゃないんですか。なんで、お芝居のためにならないことを平気でできちゃうんですか? そんな人だと思っていなかったから」
久部「残念がってればいいじゃん」
樹里「開き直った・・・」
久部「僕はその程度の男ってことだよ、以上。みんなに言うの?」
樹里「言うわけないでしょ」
ひとりごと「これが最悪だと言えるうちは、最悪ではない。最悪だ」
ジャズ喫茶の店員が請求書を渡しに来ました。
久部「58万円。どれだけ飲んだらこの金額になるんですか」
「シングルモルトの30年もので・・・。マスターは50万円で良いって言ってます」
久部は事務所に行き「支配人は僕だ」
新たな金庫番の里奈が「いいんですか?」
金庫から50万円を出し「このことは誰にも言うな」
里奈はすぐに蓬莱に報告「ありぁ相当なワルだね」
モネ「犯人わかったよ」
朝雄「気にしてないよ。また書けばいいんだし」
モネの部屋に担任の楠木訪ねて来ました「朝雄君がまた素敵な絵を描いてくれました。タイトルは『みんな一緒』
数人の教員はが裸でした。
楠木「教室に貼らせていただきます」
夜公演も無事に終わり、拍手を浴びました。
是尾はこっそり出て行ってしまいました。
蓬莱は久部に「事務所に来てもらえませんか」
役者が勢ぞろい。
51万についての取り調べとなりました。
久部「答える必要はない」
毛利「51万足りないです」
フォルモン「俺たちの売り上げだろ」
久部「僕が支配人だ」
リカ「ここは素直に話した方がいいんじゃないの」
久部「ここで働いていたダンサーが金が欲しいって。彼女の言葉を信じて51万貸した。みんなに言わなかったのは本人に口止めされたからだ」
モネ「連絡先見せてもらえる?」
久部「そこまで信用されていないかな」
僕はさみしい」と言って、舞台に逃げました。
舞台に見知らぬ女性がいました。
久部「誰?」
伴「以前ここで働いていたダンサーです」
ダンカン「いざなぎダンカンです」
久部「ここにいてはダメだ」
ダンカン「みんなにも会いたいの」
モネ「51万円ホントは何に使うつもりだったの」
フォルモン「信用できない。一抜けさせてもらうよ。そういうことだ、支配人」
久部「去る者は追わず」
蓬莱「久部さんは、この劇場を立て直した。その恩は忘れるべきではないと思うんです。もう一度チャンスを・・・」
久部「みんな出て行けよ。お疲れ様でした。解散。
絵を台無しにしたのも俺」
大瀬「あんただったのか」と怒ってから、モネの隣で「疑いがおかげで晴れました」
モネ「ごめんね」
久部「伴さん、きみは残って。ハムレットとオフィーリア、優秀なスタッフがいれば何とかなる」
ダンカン「一回ちゃんと挨拶したかったの。
私がいなくなった後、何が起こったの?」
久部はジャズ喫茶に来ました。
マスター「支払いはいいよ。今日じゃなくても」
店員「意地になっていたんだと思います」
久部「あなた、いったい何者なんですか。ひょっとして、元演劇関係?」
マスター「西武劇場のコーヒーブレイクで、料理を作っていたの私。向こうに10年いました」
伴「芝居のことはやたら詳しいんだ」
マスターは久部に「役者の数は足りなくてもシェイクスピアはできるんだ。仮面劇だよ」
久部「今から仮面は準備できますか」
伴「もちろん」
マスター「ショーマストゴーオン」
リカが劇場に戻った時、ダンカンが荷物を持って劇場を出るところでした。
リカ「帰るの?」
ダンカン「うん」
ダンカン「明日どうなるか分からないんだから
今できることをやっておいた方がいいわよ」
リカは思わず「フッ、オフィーリアも同じことを言ってた」
ダンカン「誰?」
リカ「ちょっとした知り合い」
仮面劇『ハムレット』の稽古が始まりました。
2人で仮面を取り替えて演じました。
久部「素晴らしい。僕が求めていたオフィーリアだ」
リカだと思って抱きつきました。仮面を外したら、演じていたのは樹里でした。
久部「いつせりふを覚えた?」
樹里「稽古を毎日見ていたので」
リカのいた事務所にオーナーが来ていました。
オーナー「やっぱりこの世界熱意だけじゃダメなのよ。仲間の信頼を失ったら、あとは落ちるだけ。あんたも距離を置いた方が無難よ」
リカ「そう思いました」
オーナー「こっちが被害受ける前に先手打ちましょう。支配人は首。次は誰にしようか」
リカ「私の夢聞いてもらえますか。もっと広い世界で勝負したいんです。オーナーは顔広いし芸能界の人紹介していただけませんか」
オーナー「知り合いはいっぱいいるけどねぇ・・・。とりあえず来週、東宝芸能の社長と会食するけど、今年から始まった東宝シンデレラのオーディション聞いてみてあげようか」
リカ「年齢制限とか、大丈夫でしょうか」
オーナー「何とかなるんじゃない、あんたは童顔だし、大事なのはここ」ハートをたたきました
リカ「もっと早く相談すればよかったです~」
オーナー「利用してちょうだいよ、力になるから」
リカが部屋へ戻ろうとしたら、久部が追いかけてきました。
「ごめんなさい。あなたといたら私、自分のやりたいことができなくなるの」
久部「リカさんのやりたいことって?」
リカ「決まっているでしょ。八分坂を抜け出すこと」
久部「僕が連れていきます。外の世界に」
リカ「あんたにはムリ。私の父はね実業家だったの。これでも私、裕福な家の生まれだったの」
久部「そんな気はしてました」
リカ「小学校のこと習い事は一通りやらされた。中学校の時オイルショック。会社はつぶれて、父は行方不明。そのあとは絵にかいたような没落人生。ありとあらゆる仕事をして、気づいたら、八分坂で裸で踊ってた。一度でも豊かな暮らしを知っていると、自分のみじめさが余計に身に染みるわけ。わかる?」
久部「なんとなくは」
リカ「わかるわけないわ、あんたには。ここで生きる人間の気持ちなんて。電車で帰るところに実家がある人になんて分かるわけないの。はい上がってみせる、絶対。あなたとはここでさよなら」
久部「嫌だ」
リカ「まだ分かんない?私はあんたに見切りをつけたわけ。言わせるかな、ここまで」
リカの方から抱きついて「楽しくないことはなかった。いい時間をありがとう」
久部は一人で円形の舞台で呆然としていました。
樹里が話しかけ「シェイクスピアって、不思議だったです。戯曲を読んでいると、どうしてこの人出てくるんだろうといる。こんな登場人物いなくてもいいのに。ある時気づいたんです。シェイクスピアは、劇団の座付き作家だった。だから彼の頭の中にはいつも劇団員のことがあった。皆に役を与えないといけない。だからお芝居が下手な役者にも
ちょっとだけ舞台に立たせてあげたんじゃないかな
だからシェイクスピアの作品は温かい。どんなに悲しい話でも温かい」
久部「よく勉強したな」
樹里「自分のためだけに芝居を作っている人に、人はついてこないと思う。言う機会がなかったけど、父の転勤が決まりました。私もついていきます」
久部「蓬莱君のさ、家庭環境聞いたことある?」
樹里「どういうことですか?」
久部「彼のお母さんの性別って知っている?」
樹里「多分女性だと。でも名前が変わっていておとこさんって、いうんです
久部「そうなんだ。色々ありがとう助かったよ」
久部は伴に向かって「決めた。劇団は解散だ。僕は身を引きます。後は蓬莱君に任せる。みんなを引っ張って行ってください。ここは駅から近い繁華街だ。こんなに恵まれた劇場はない。続けて」
大瀬「行かないでください。僕にもっと芝居のことを教えてください」
久部「僕に教えられることは、もう何もない」
出ていきました。
久部は、原点でもある案内場「全部失った。八分坂で手に入れたものは全部」
おばば「人間、丸裸で生まれ、死ぬときも丸裸」
久部「前にもこんな気持ちになったときがあった」
おばば「初めてここに来た時だ。何回同じことを繰り返すのだろう。是尾さんのことは言えないな。これからどこへいけばいい?」
おばば「運命は星が決めるものじゃない。自分の思いが決めるんだ。さっ、行った行った」
「よっ」
ロックンローラーのリーダーから挨拶してきました。
久部はバッグをリーダーを渡して「よっ」
八分坂横町の入り口に立ったら、ネオンが消えました。
後ろを振り返ったらリカが赤いドレスを着て、ダンスしているという想像。
蓬莱と樹里は神社にいました。
蓬莱「劇場を任されてしまいました」
樹里「頑張って」
蓬莱「良かったら、力を貸してくれませんか。僕と一緒に劇団を。樹里さん、好きです」
樹里「そうでもない」
蓬莱「失礼しました」と言って、走って帰りました。
あれから2年。
蓬莱は放送作家になり、『スタードッキリマル秘報告』のロケに立ち会ってました。
フジテレビの局内で、フォルモンとパトラのコンビとばったり。
蓬莱「久しぶりで八分坂に来てみた。WS劇場は人手に渡り、劇団は解散、お笑いライブの場所に」
スターになったはるおがいました。
蓬莱「八分坂に夜の街の雰囲気はもうどこにもない」
リカはバーガー店のイメージキャラクターに抜擢されてました。
おばばはクレープ店にくら替えしていました。
オーナーは乱士郎を率いてスッカスッカ弁当店を経営。
久部は自転車で弁当の配達。
トロは、有名になった黒崎の劇団で主役を張ってました。
是尾は工事現場に戻ってました。
久部はダンススタジオのある公民館に到着。
帰りにある部屋をのぞいたら、トニーとフレたちが稽古をしていました。
蓬莱とケントが仕切っていました。
樹里「上演する予定はないんですって。たまに集まってここで稽古。みんな楽しそう・・・」
うる爺、伴、論平、大門も含め、勢ぞろい。
是尾、リカ以外の全員が集まっていました。
樹里「顔出します? みなさん喜ぶと思いますよ」
見たら久部はいなくなっていました。
公民館の受付は「あんたさ」「これいらない」
ロックンロールのリーダーでした。
シェイクスピア全集の入った重いバックを久部に返しました。
久部は自転車で駒沢オリンピック公園。
「この世はすべて舞台、男も女も役者にすぎぬ。ノーシェイクスピア、ノーライフ」
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ついに完結しました。
本ドラマの視聴率が振るわなかったそうで、残念でしたが、僕的には大いに満足。
結局のところ、倖田リカが疫病神だったのではないでしょうか。
「おとこから生まれた男に足を引っ張られる」とのおばばの忠告がつながって、不気味でしたが、久部は才能のある演出家だったのに、自分から身を滅ぼして、仲間がどんどん離れていきました。
自分が悪いときは謝ることすらできない人は、弁当屋の配達員もいつまで続くのでしょうか。

