私のかわいい息子はいつからか、浴室で歌う様になった。
いつからだろうか。
高校生になった時か、時期は定かでない。
晩御飯後の時間なので、私はご近所にご迷惑かと思いつつも、かわいい息子がどんな歌を口ずさむのか、迷惑だと注意せず聞き耳を立てていた。
だけど、何を歌ってるのか全く分からなかった。
言葉が聞き取れず、聞いた事無いメロディだったから、いつも私の母である息子のばあちゃんと、
歌ヘタかもーーー
って、かわいい息子の話で盛り上がってた。
息子は洋楽が好きだったのだ。
言葉が分からず聞いた事無いメロディは、洋楽だった。息子のお別れ会の時、友達が教えてくれてわかったのだ。
邦楽だと思い込んで聞いてたから分からなかった。
あの子はヘタじゃなかったかもね…。
そういえば中1の頃、友達の家の車乗せてもらった時、洋楽流れてたの聞いて、洋楽カッコいいって言ってたね。そんな事すら忘れていた。
愛する息子との会話を忘れていたとは。
息子が今、まだ、元気なら、
忘れててごめん!で済む話なのにね。
もはや歌声どころか、
話し声も笑い声も。くしゃみも咳も。
お家の階段登る音も。階段降りる音も。隣の部屋で寝返り打って壁に当たる音も。シャワーの音も。何もかも全て、全て、全て、
息子の声や、放つ音は、
聞こえなくなってしまった。
この前まで、居てくれてたのに。
ほんと、この前まで居てくれてたのに。
恋しい限りだ。