ある時、3人でYoutubeの音楽を聴いていた時のこと。

今、流行りの曲などをモジモジ君に教えてもらい、

へぇ~っと興味深く聴いていた私たち。

いろいろな曲を次から次へと引っ張り出しては、

私たちに詳しく講義してくれます。

 

昔は、何か質問しても返って来る言葉が、面倒くさそうに答える一言か、

「さあ・・・・・・。 よく分かんない」ばっかりだったなと思い出していました。

意味不明なおしゃべりで、何が面白いのかケラケラ笑っていることはありましたが、

こちらが聞きたい質問には、よっぽど気乗りがしないと、

すんなり答えてくれなかったのです。

 

それなのに、今は何を聞いてもある程度の答えは返ってきます。

それどころか、一応の会話は成り立つように、

ちゃんとキャッチボールができるようになっていました。

 

普段から一緒に暮らしていれば、当たり前の成長過程だと思って、

それほど気にしなかったと思いますが、

久々に会う私たちにとっては、その変化がより鮮明に分かって、ちょっとした衝撃でした。

 

そんなことを思っていた時、

突然、モジモジ君が言いました。

 

「あのね、ビートルズって知ってる? 学校で習ったんだ。 いい曲だよね」

 

そう言って、”Let it be”を流し始めました。

 

「英語だけど、意味も分かったよ。 ふたりとも知ってる?」

 

「もちろん! 有名過ぎるくらい有名で、皆知ってるよ!」

 

そう言って、しばらくビートルズの曲の話で盛り上がりました。

 

 

妻はその時、気が付いていました。

以前のモジモジ君は、英語をひどく嫌っていました。

パソコンのアルファベット入力も敬遠していて、かな入力しか覚えないので、

一度、アルファベット入力を教えようとしましたが、

「オラ、英語大嫌い! 苦手だし! 日本語だけでいいんだもん!」

と全力で否定していました。

 

この調子じゃ、中学生になったら、英語の授業について行けなくなるんだろうな・・・

そう思ったりもしましたが、それもモジモジ君の選択なので、

まあ、ほどほどにどれも頑張ってね!くらいの会話をしてました。

 

ところが、今はわざわざ自分から英語の話を持ち出してきたのです。

そして「オラ、アルファベット入力も出来るよ!」と見せてくれたりもしたのです。

 

これは、もちろん中学生になって、英語の授業が本格的に始まり、

思ったよりも英語を毛嫌いしていないという、

とても喜ばしい成長を見たということではあるのですが、

それよりも、ちょっと違う考えが浮かんできました。

 

この会話のフリは・・・・・・・

別に英語が苦手じゃなくなったことを、

私たちに、知らせたかったわけではないだろう。

 

わざわざ唐突に出すビートルズの話題は、

私たちなら、この古い曲の話に乗って来るだろう、

新しい曲ばかり聴かせるだけでなく、古い曲の話をすれば、

私たちが喜ぶんじゃないか、会話が弾むんじゃないか・・・・・・という、

ちょっとしたモジモジ君の気遣いだったんじゃないかと思ったのです。

 

モジモジ君が帰った後、夫とも話しましたが、

やはり夫も同じように感じたようでした。

 

すっかり、そんな気遣いもできるようになったんだねって、

ふたりで、しみじみしました。

 

 

そういえばこの前、レストランで食事をしている時、モジモジ君が私に

「ねえ、今、何話したらいいか困ってるんでしょ。

オラと無理に会話しようとしなくていいんだよ」

と言いました。

 

・・・・・・ あっ、バレてる ( ;∀;)

 

だって、面倒くさいよね。

学校のこととか日々の生活のこととか、久々に会ったからって、

「最近どうだ?」ってとりあえず聞いてくる親戚や近所のおじさんのよう。

私も子供の時、こんな会話面倒くさかったから。

 

そう思って、会話どうしようかな~~~って思ってた時に、

モジモジ君に言われました。

 

「そうね。別に何も話さなくても大丈夫よね。一緒にいるだけでいいんだよね」

妻はそう答えました。

 

もう手持無沙汰だからと言って、

テーブルの上にあるものを片っ端から触ろうとしたり、

テーブルの下に潜り込もうとして、

妻をハラハラ、イライラさせたモジモジ君はどこにもいません。

すっかり落ち着いて、顔も引き締まった大きな男の子がそこにいるだけです。

けれど、妻の記憶の中のモジモジ君は、いつまでもあの頃のまま・・・・・・。

 

妻は思います。

腹が立ったり、イライラして感情の起伏があった日々がありました。

けれど、だからこそ、その日々が、記憶の中に強く残っているのです。

モジモジ君がずっと聞き分けの良い、大人しい良い子だったら、

こんなに強烈に妻の記憶に残らなかったかもしれません。

また、今こうして、その日々を懐かしく思う気持ちも、

今ほど強くはなかったのではと思うのです。

 

成長したモジモジ君を前に、

ほっとしたような、ちょっと寂しいような、

そんな複雑な気持ちが沸き起こりました。

 

妻はつくづく、

そして重ね重ね、思います。

 

こんなすぐに良い子になるって分かってたら、

あの時、あんなに腹立てなかったのにな~~~~!

腹立てて、イライラして、私が損しただけだった~~~~!

 

今は、そんな日々を過ごしている私たちです。

 

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