#自己表現と他者治癒 ③ 〜「大丈夫、味方、安心」の穏やかな世界

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「素人弾き」は、楽譜や指の動きを頭の意識で考えているため、緊張で頭の思考が停止するステージではミスしてしまう。 ✴︎

「女王弾き」は、頭で考えなくても勝手に指が動くほどの練習量を重ね、ステージでその苦労とフラストレーションを爆発させることで自己陶酔と快感を味わうことができる。


フラストレーションとは、怒りを原動力としており、怒りホルモンと同様のノルアドレナリンやドーパミンが脳から分泌されている状態であるため、ステージでは麻薬のようなハイテンションの無敵感と達成感を味わえるが、翌日は虚脱感と疲労感が激しい。


そのギャップは、まるで躁鬱状態を繰り返しているかのようであり、多くの天才アーティスト達がステージに魅了される一方で精神を病んでいくのもわかる気がする。


芸術とは、#自己表現 。

自己表現とは、究極のエゴイズム。

そのエゴイズムの爆発に、多くの聴衆も快感を共有し拍手喝采を送る。


それに対して、

「フェアリー弾き」は #他者治癒 という芸術と全く相反する力をベースにつくられた演奏スタイルだ。


この演奏スタイルを思いついたきっかけは、私が心理カウンセラーの資格を取ってカウンセリングの仕事をするようになり、クライエントさんにハープを使って病気の治癒のお手伝いをした経験だった。


頭痛を訴えてうずくまるクライエントさんに対して、30分ほどハープを弾いているうちに、頭痛が全く無くなり元気に笑えるようになった事があった。


あるときは、学校でイジメに合って死にたい頭の思考がぐるぐる止まらなくて苦しいと訴える中学生に、ハープを演奏したら泣き始めて…涙を流したあとにはもう死にたい気持ちが消えていた。


その子は「ハープのあったかい音が、大丈夫だよ。味方だよ。と言ってくれた気がしました」と表現した。


あるときは、役割の自分で残業を続けているうちに鎧が取れなくなって眠れないと訴える人に、ハープを弾いたら、そのクライエントさんの表情が別人のように変わり、心の自分が姿を現した事があった。


心のその人は「ハープの音を聴いたら、安心して数ヶ月ぶりに本音を言えて、眠れるようになった」と表現した。


他者治癒のために必要なのは「大丈夫」「味方」「安心」という3つのキーワードである。


悩みというものは、他の人や世間から入れられた頭の思考により起こっているので、心理学ではその人自身の心の感覚を呼び覚ませば問題解決できると言われているのだが、


クライエントさんの心の自分が出てくるようにするためには、カウンセラーも心の自分を出さないといけない。#自己開示 と呼ばれるスキルである。


カウンセラーが頭でアドバイスしたり、役割の自分で鎧を着ていると、相手も緊張したり依存したりするため問題を悪化させることが多い。


すべての問題の答えは、クライエントさんの心の中にある。


だから、私が頭の自分や、役割の自分でハープを弾くと、クライエントさんの心を呼び覚ますことが出来ず、病気の症状も治癒することができない。


CD「スリーピングハープ」の解説を書いてくれた #脳科学者 の #茂木健一郎 さんによると、私がフェアリー弾きをしているあいだは脳がデフォルトモードネットワークという状態に切り替わっているそうだ。


これは、普段の日常生活では使わないスイッチで、瞑想したり眠るときのボーっとした脳の状態だそうだ。


私は、心理カウンセラーとして催眠療法を学んでいるので、あるプロセスを踏むと数分間で自分自身の意識(頭の自分)を、無意識(心の自分)に切り替えることができる。


このスキルを使って心の自分がハープを弾くようにすると、ミラーニューロンと呼ばれる鏡のような脳のモノマネ細胞の働きをつかって、相手の心を呼び覚ますことができる。


コンサートに来たお客様が「みやびさんのハープは指先から音が出ていなくて、楽器を弾いてるというより、不思議な魔法のようだった」と感想をくれたのは、たぶんこの特殊なスキルを使って演奏しているからだろうと思う。


お互いの心と心で向き合う世界は、建前も嘘も偏見も無い。年齢も肩書きもお金も関係無い。 「大丈夫、味方、安心。」の穏やかな愛の世界だ。


怒りではなく、穏やかな愛を原動力にするフェアリー弾きをするとき、ハープ奏者からも慈しみの気持ちを感じたときに沸き起こるオキシトシン(愛情ホルモンとも呼ばれる)が分泌されているそうだ。


その「愛」の音楽を奏でるために必要なのは … 「たった1人の大切なひとに感謝を伝える」


ありがとう、の心。 (続く)