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21歳のときにUSA国際コンクールで日本人初入賞を果たすことができた。

でも、1位じゃなかった。

1位になったのは、真っ赤なドレスでバリバリと力強く豪快に弾くタイプのハーピストで、世界最高峰とされるベルリンフィルの首席ハーピストでさえも2位だった。

プロフェッショナル音楽家になれば2時間のソロリサイタルをこなすため、観客を飽きさせない陰影のある音楽、強弱のある豊かな表現力、華やかなエンターテインメントが求められる。

そうでなければ、お金を払ってチケットを買う大勢のファンを獲得することはできないからだ。

わたしも大学生だったけれどすでに演奏家として仕事をしていたのでプロフェッショナル向きの音楽づくりをしていた。

でも、コンクールの採点基準は違う。

数十人が一律同じ曲を競うとき、朝から晩まで同じ曲を聴かされている審査員の印象に残るのは、美しい音色で上品に奏でるタイプよりも、むしろ押しの強いインパクトがあるタイプの演奏家だ。

コンクールでは、2時間リサイタルを聴いている暇はない。1人に与えられた時間は短い。だから長時間にわたって変化に富む多様性や聴き手を感動させ楽しませることよりも、短時間で自分の存在を強くアピールすることが重視される。

今のクラシック界ではコンクールで上位の成績をおさめても仕事の依頼がこないと嘆く若手が多い。

一方で、売れっ子として活躍する人気アーティストのなかにはコンクールで賞を得ていない人が非常に多い。

この現状はコンクールの問題点を浮き彫りにしているような気がしてならない。

とはいえ、自分もコンクールをめざすことで世界のレベルの高さを知り成長させてもらったのは事実なので、このあたりは難しい問題なのだが。。。

コンクールの賛否両論はさておき、

USA国際コンクールの審査員だったミュンヘン音楽大学教授のハーピスト、シュトルク先生をはじめ各国の審査員たちが寄せ書きして私にくださったメッセージカードを、今でも思い出す。

【たとえmoonになれなくてもあなたはstarになれる】

そういう意味の英語が書かれていた。

月は一つしかない。

ナンバーワンだ。

でも、コンクールや成績で1番になれなくたって輝くことはできる。

いや、むしろ1番になったから輝くとは限らない。

誰かに勝つための強い音、誰よりも早く弾くことをめざさなくていい。

あなたは、人の心を浄化する美しい音色を大切に、お客様から愛されるスターをめざしなさい、と。

シュトルク先生の言葉が私の生きる指針になった。

だから

1番をめざすための数少ない人材を育成するのではなく、

スターとして誰もが輝けるような指導をする。

誰かと競う音楽ではなく、

誰かを愛する音楽を教える。

それが

ミヤビメソードの理念☆