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この漫画しってますか~?

70年代に初版されて以来ベストセラーとなり、最近カラー完全版が発売されて買っちゃった。

子供の頃にクラシックバレエ習ってたから、この漫画ハマったなぁーと懐かしく読み返してるうちに、

昔は分からなかった台詞がやっとわかるようになってきたな、と。
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バレエの先生がプロをめざす生徒たちに叱咤激励するシーン。

「芸術家としてでなく技術屋として終わりたい人はでていきなさい!」

まぁ、ちょっと厳しいけど確かに私たちの業界ではよくこういう区別のされかたをしますね。

①楽器弾き(技術屋)
②音楽家
③芸術家

とプロのなかにも3つのステップがあるのです。

楽譜通り指がまわってミスなく弾けるよう、ひたすら一生懸命練習する段階が①

技術をマスターすれば、そこそこの仕事をこなせてプロにはなれるかもしれないけど、それだけでは若いときだけの便利屋で終わってしまいます。

次のステップは、歌うように流れるフレーズを考え、強弱をつけ、喜怒哀楽を表現するなど楽譜の奥に隠された作曲家の意図を読み取る力。

そのためには、指練習だけでなく書物を読んで作品の歴史を調べたり、自分が弾いてる楽器以外の他の楽器の一流の演奏家の音楽を聴き、他楽器についても勉強する必要があります。

例えば、ハープが専門ならハープはもちろんのこと、ピアノ、バイオリン、フルート、チェロ、声楽、指揮、作曲などについての知識もなければいけません。(他楽器を弾ける必要はないです)

弾き方は違っても音楽家に求められる美しい音楽づくりの論理は全ての楽器に共通するものであり、他楽器から学ぶことは非常に多い。

クラシックだけでなく、ジャズ、ポップス、ロック、演歌などジャンルの垣根を超えて学ぶのも大切です。

そして、

最後のステップ。

芸術家に求められるのは、審美眼。

真に美しいものを見る感性を養うと、音楽だけでなく舞踊、料理、ファッション、生花、書道、茶道、弓道、絵画、映画、小説…と全ての芸術に通ずることができるようになります。

一流のものに共通するメソッドと、そこに到達するまでの過程がどの分野でも同じなので分かるようになるんです。

そして、この段階までたどり着くと、不思議と人の心まで読めるようになります。

芸術とは、作り手の深層心理を表すものなので、

芸を極めるということは、人の言葉や肩書きに左右されず人の本当の心がわかるということでもあるのですね。

わたしの場合だと、10代~20代前半はハープにかじりついて①をこなすだけで精一杯でした。

20代後半~30代はハープからいったん離れて②のステップを学び、

40代の今、ようやく③のステップのスタートラインに立った気がしています。

一年くらい前から急に、生徒さんの弾くハープの音が音楽の音としてではなく、弾き手の心の声として聴こえてくるようになり、今まで人生に対してモヤモヤしていた様々な疑問が霧が晴れるように一気に解決して開眼したのです。

おもしろいことに、生徒さん本人はたいてい弾くのに必死で自身の内面が音に表れているとは気づいてないのですが、客観視している私には弾き手の人生観や性格が手に取るようにわかるのです。

いまは、音楽を聴いたり弾いたりしている意識はなくて、ハープでおしゃべりしている感覚に近いかな。

コンサートで演奏するときも指を動かしてる意識もないし、弦もあまり見ていないですね。空気の流れを読んで動かしているだけです。

同じハープを弾いているのに、どのステップに自分が立っているかによって、

ハープとの向き合い方も、
人との付き合い方も、
世の中の見え方も、

まるで違ってくるのが本当におもしろい。

だから30年近くハープに人生を捧げていても飽きないのです。

わたしの主催しているハープ教室は8割が趣味の生徒さんですが、

みなさんに、それぞれのステップを経験させてあげたいな、と思っています。

毎日8時間も練習するプロのような完成度を求めることはもちろん無理だけど、

ハープ以外にも様々な人生経験を積まれてきた皆様には、知識と経験という財産があり、threeステップの片鱗だけでも味わってもらうことは可能だろうと思っています^_^

いや、趣味だからこそ、技術屋で一生を終わるのはもったいないではないですか!

そして、2割の音大卒業生の皆さん、プロをめざす若い皆さんが①だけに終始しているのが本当に残念。

今必死で闘っている池の外に、まだまだ未知の海が広がっているんだよ、といつかお伝えできる説得力がついたならば嬉しいと思いますね。

まぁ、わたしも若いときは何言われても視野が狭くて理解できない時代もありましたなぁ^_-☆

冒頭でご紹介した漫画の名台詞をもうひとつ。

「ほんとに私達の世界はきびしい。若いころは技術を追うのに一生懸命で、バレエの情緒性を理解できるようになった今はもう体がきかないとはね。」

バレエや音楽に限らず、人生とはそうしたものですよね。

その意味で、

若い世代と、年寄り世代を神様は公平につくったもんだなと思うあたり、自分も歳を重ねたのかなぁ…(笑)