「心に響く」「心に沁みる」「心に残る」「心が震える」

素敵な言葉です。

テレビ番組に毎月出演していた2年間は、

デパートに買い物にいくと「あっ、ハーピストの人ですよね」って店員さんに声かけられるほどでした。

ゴールデンタイムの全国放送だと、一回出演すれば約20万人のひとに知られるんですね。

それはハープを普及するにはとても有難いことなんだけれども、知られるかわり忘れられるのも早い。

今年本格的なライブを数年ぶりに再開してみたら「心に残る」っていう言葉をあちらこちらで皆さまに言っていただきました。

ライブは、一回二時間、全身全霊でがんばっても小ホールは300人~500人くらい。

たったの300人のために、自分の全人生をかける。

舞台に立つときは、あ~ここで椅子から転倒してわたしステージで死ぬのかも...って毎回思いますね(笑)

そのくらい、体力的にも神経的にもしんどいんです。

テレビ、ラジオの仕事はとても楽しい。(←私の場合。本業の方は大変でしょう)
CDや本の制作は長期戦だけど間違ったらやり直せる気楽さがある。

瞬発力でその日その時間に魂を爆発させなきゃいけないライブは、快感と至福があるぶんしんどい。

有名なJ-POPミュージシャンのライブのあと楽屋に伺うとエネルギー消耗して倒れててホントすごいなって思います。

でも、考えてみれば誰かの「心」を震わせるって、そんな簡単なことじゃないんだよね。

20代の頃は、毎月立派なホールでソロコンサートをやらせてもらっていたけど、不謹慎ながらもっと大きな仕事がしたいって思った時期もありました。

クラシックの演奏家は努力に対して、お金も知名度も全然見あわないじゃんー!と。しかも、音は目に見える形で残らないし空しいなぁ。と。

で、2000人~7000人の大ホールでソロ演奏してみたけど、やっぱ臨場感が伝わらないんです、ハープの場合。アコースティックな良さが消えてマイクがんがん入れてお祭りみたいになっちゃう。

葉加瀬太郎さんに憧れてドライアイスたいて煙りだす演出とかやったり(←ハープは弦が湿気て鳴らないし!)エレキハープでロックとか色々やってみたけど年輩のお客様が多い楽器なので不評でしたねー。

でも、歳をかさねるにつれて、たった一人の相手の「心に残る」音を伝えていくのって、何にもかえがたい貴重な行為なんだなぁ、と思うようになりました。

そういえば、私が反抗期でコンサートやりたくない、って泣いて、あの国民的歌手 由紀さおりさんにご迷惑かけたことあって(ごめんなさ~い。汗)

そのとき、「地道だけどわたしたちは、ライブをコツコツやって、一期一会に出逢ったお客様の心に響く音楽を精一杯やるしかないの。ライブは、時代に流されず自分の音楽が残っていく唯一の方法なのよ」という様なアドバイスをしてくださったんです。

そのときは、テレビにもたくさんでて数々のヒットCDを生み出している由紀さんがなぜ?ってわからなかったんですけど、今ならその奥深い意味が理解できます。(由紀さおりさん、最近CDが全米チャート1位の快挙を成し遂げられましたよね。おめでとうございます!)

そういう気持ちになれたのって、教室を開いたおかげですね。

マンツーマンレッスンは、小さなスタジオで生徒さんと1~2時間一対一で向き合うじゃないですか。

1人とじっくり向き合うと、自分の発した言葉や行動で相手が変化してゆくのがわかるんです。ハープに関して手抜きができない性分なので、一対一でも全身全霊をこめて教える。

こちらが真剣勝負で向き合うと、人生が変わったと言ってくれる生徒さんが多い。

レッスン中に泣いたり笑ったり、感動がいっぱいでミヤビコースは熱いんです(笑)

それを積み重ねていくうちに、ライブのステージから客席を見たときに、以前のように客席という団体でなく、1人1人の表情を見られるようになった。

客席ってひとくくりじゃなくて、1つのシートに座ってる1人の人間なんですよ。そのひとには、この会場に来るまでに長く深い人生ドラマがあって、その過程でこのライブとたまたま出逢って、いろんな想いを抱えて、いろんな場所から来てくれてて。

もしかしたら、病気で苦しんでた人かもしれないし、バイトで一生懸命お金ためて来てくれた学生さんかもしれないし、育児が大変ななかやっと来れた主婦の人かもしれないし、ハープを勉強してる熱心な人かもしれないし、、、

わたしのコンサートはトークもたくさんあるんだけど、話しながらお客さんの目をみてあの人退屈そうにしてるけど大丈夫かな、あの人楽しそうだな、あの人は前回も来てくれてたから違うネタをしゃべろうかな、とか色々調整するようにしてます。

300席じゃなくてそういう1つの人生ドラマが300通りあるって事なんですよね。

そう考えると、1人のお客様が私のハープと出逢うのも奇跡的だけど、その空間にたまたま居合わせた1人×300通りの人生がハープの音色によって重なり合い2時間だけ交差してまた散ってゆく。

その奇跡的な2時間になんらかの化学反応をおこせたら、数字を超えた素晴らしい意味があるんじゃないか、って思えるようになった。

客席に向かって上手く弾こうとするんじゃなくて、1人1人のお客様の表情をステージから見分けて相手を思い向き合える力がついたから、「心に響く」音がだせるようになったんじゃないかな、と思います。

音楽の世界は、技術だけでは到達できない。人間力というものの大切さを、日々生徒さんたちから教わっています。

今日もこれから、シンガポールよりお越しの生徒さんに英語でレッスンしてきます^ ^