「武士の一分」という映画を最近になって観ました。
木村拓哉さんの主演でずいぶん前に話題になったけど、
本当にいい映画だったなぁ。
主題歌の尺八を演奏していた藤原道山さん。
コンビでよく共演させてもらっていたのですが、
いつ聴いても美しく繊細な音色が素晴らしい。
「アベマリア」や「バルトークのルーマニア民族舞曲」を
フルートのように軽々と吹いてしまうすごい人です。
そして
普通の日常を過ごす、普通の人々の
心の襞をきめ細かく描いていく山田洋次監督。
やっぱり素晴らしいです。
大きなアクション場をつくらなくても、
静寂の内にこそ真のドラマチック性を秘めている。
この思想が、まさに「和の心」だと思うんです。
『ミヤビ・メソード』がめざしている世界観でもあります。
山田監督と対談のお仕事をさせていただいたとき、
「配役はどうやって決めるのですか?」
と伺ったら
「俳優の佇まい(たたずまい)」
とおっしゃいました。
体からオーラを発している役者さんは沈黙していても雰囲気をつくれる。
立っているだけで絵になる。
演技力だけでは到達できない、もっと根底にある人間力の大切さ。
芸の世界における人間力とは、美意識や信念を磨くことにある気がします。
普通の暮らしのなかの、一日一日、いや一刻一刻で形作られていくものかもしれません。
音楽の世界とも共通するのではないでしょうか。