「原爆の父」と言われるオッペンハイマーの伝記映画。原爆開発、オッペンハイマーの機密アクセス権の聴聞会、ストロース原子力委員の閣僚選任公聴会の3テーマが混ぜながら展開する上、セリフも速く説明もあまりないので分かりにくい部分もありますが、法廷ドラマ的なエンタメ感もあり、難解と言うほどではありません。3時間も長くは感じなかったですね。ただ、原爆開発後に懊悩する技術者の苦悩を描くにしては、話を広げすぎな気がします。

国家プロジェクトに意気揚々と参画し、見事やり抜いたはいいが、「とんでもないことしたのでは」と焦り水爆に反対するがまたそれを攻撃され…という現実の残酷さを描いています。そういう個人的なテーマを描いているため、核攻撃の惨禍にフォーカスしてるわけではないですが、心理的動揺のシーンは掘り下げてましたよ。むしろアメリカ映画がよくここまで作ったと思いました。「東京大空襲を知ってデモを起こさないアメリカ国民が心配だ」なんてセリフがチラッと出るのも仰天でした。かなり知性的な脚本ですね。

キャストもいいし、テーマも際どいし、重厚感もあって、見応えのある作品でした。