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大河ドラマ「篤姫」で感動して泣けた場面、まだあります。




第46回「慶喜救出」



徳川慶喜は幕府を建て直すため、薩摩討伐の詔(みことのり)を賜ろうとするが。

頼みの綱の孝明天皇が亡くなり、若い帝が即位した朝廷は薩長の力が強い。

薩長軍(討幕軍)は戦闘を開始、錦の御旗をうまく使って旧幕府軍を朝敵(朝廷の敵)にする。
慶喜は家臣である旧幕府軍を置き去りにし、少数の従者を連れて大阪を抜け出して船で江戸へ帰ってくる。

勝海舟を呼び出し、助けを求めるが、天璋院様に会うべきと言われる。
薩摩の分家の娘ごときに、なぜ水戸徳川出身の私が、と嫌がるが、他に手はなく、天璋院に目通りを願う。




大奥では、本寿院(姑)が、慶喜の首を差し出したら徳川宗家と大奥は助かる!と叫ぶ。

和宮も、慶喜公を許せないと言う。

天璋院も慶喜を許せない気持ちがあるが、会わないと何も始まらない、と思い、会うことにする。




なぜ家臣たちを置き去りにして帰ってきたのか?と天璋院。

私がいるとどちらかが倒れるまで戦が終わらない、戦をやめさせるため、と答える慶喜。

本当の敵は諸外国、国内で争っている場合ではない、と。


なぜ私に会いに来たのかと問うと黙ってしまう。

勝海舟に言われたか、と気づく天璋院。


自分の意志で来るわけがない、あなたは女である私を侮っていると言い放つ。

大奥を統べる大御台所である私は、徳川宗家を守らねばならないと言うと。

徳川家を守るためこの首を差し出す覚悟は出来ている!と慶喜も叫ぶ。



天璋院「綺麗ごとはもうよい」

慶喜、睨んで「綺麗ごと!?首を差し出すのが綺麗ごとでございますか!?」

天璋院「綺麗ごとじゃ」

 「最後の将軍、徳川慶喜は潔く散った。でもその後に残るのは本来の徳川宗家ではない。同士を殺し、おめおめと生き残ったみじめな抜け殻じゃ!」

慶喜「では私は、どうすればよろしいのですか…」

 「朝敵にされたまま、このままおめおめと生きろと…」

天璋院「生きてもらいます。あなたを信じ、従ったばかりに裏切られた者達への償いのために」

慶喜「生き恥をさらせと!?」

天璋院「さらすのです。それと、やるべきことは、もう一つ」

慶喜「もう一つ?」




天璋院は、慶喜を和宮の部屋へ連れて行く。

慶喜とわかり、驚いて口を小さく開ける和宮。


慶喜「それでは、私にひたすら恭順、隠居・謹慎をせよと!?」

天璋院「戦を避けるためにも、徳川宗家の汚名をそそぐためにも、今はひたすら許しを請うしかないでしょう」

 「薩摩長州と戦うべきだと言いだす者も大勢おりましょう。その声に耳を貸さず、ひたすら恭順・謹慎を貫くのです」

 「よいですね!」

慶喜、目を閉じ、耐える風情で「はっ…」

天璋院「しかし、それだけでは敵も許してはくれんでしょう」

和宮の方を向き「私は嘆願書を書こうと思います。徳川慶喜の一命を救ってくれるようにと」

 「出来ますれば、宮様にもお力添えを頂きとうございます」

和宮「私がですか?」

天璋院「朝廷に訴えることに出来るお方は、他にはおりませぬ」

和宮、しばらく黙したまま視線を落とし、やがて顔をあげて笑顔で。
 「母上様の仰せでしたら」

天璋院「ありがとう。よろしくお願いいたします」

慶喜「なぜそこまでのことを…。この慶喜のために…」

天璋院「あなたは、家族です」

慶喜「家族…」

天璋院「徳川という家に集った家族である以上、私は、命をかけてあなたを守らねばなりませぬ」

 「あなたは聡明な人です。全てが見通せてしまったのでしょう」

 「朝敵として追われる身となることを。その末に、さらなる流血と戦が待っていることを」

慶喜「いえ、私は…」

天璋院「人の上に立つ者は孤独です。その孤独の苦さ辛さは、味わった者でなければわかりません」

 「大奥の者達、一千人を取り仕切っていくことでさえ、時に、その恐ろしさに身がすくみます」

 「それが、天下を治める将軍ともなれば、いかほどのものか」

 「それをおわかりなのは、私が知る限り、家茂公と、夫であった家定公でした」

 

 「お二人とも、将軍の重荷を背負われ、若くして亡くなりました」

 「あなたは生きてください!お二人の分まで!」

慶喜に手をつき「これまでのご苦労、お察し申し上げまする」

深く頭を下げる天璋院、それに倣い頭を下げる和宮。

慶喜は涙を浮かべ「そのような…、お手を…、お手をお上げください」




許せないと思っていた慶喜に会い、話をしているうちに、この人の命を救わないといけない。

それが、ドラマの天璋院篤姫の思い。

(史実では、かなり慶喜を忌み嫌っていたらしいですが)



ドラマで、薩摩時代に母から教わった、考えてもわからなければ感じるままに任せる。

それが、慶喜に愛を注ぐということ。

この溢れんばかりの愛の源は、子供の頃に両親からめいっぱい愛されたから。

温かい家庭でのびのびと育ち、愛に満たされているから、成長して周りの者達に愛を注げる。

脚本家の田淵由美子さんが、大河ドラマ「篤姫」で愛を伝えたい、と。

それが画面を通して伝わるから、感動して泣ける。





見えない仕組みナビゲーター・真起子