闇に堕ちる夜、君の瞳は月のようだった。

 子供のころ暗闇は怖かった。
 隙間にある闇にすら、
 何かを見て怯えた。

 子供のころ死ぬのが怖かった。
 死んでしまうという恐怖が、
 ただひたすらに目の前で睨みつけていた。

 大人になって
 そんな感情をすべて忘れたふりで、
 夜に外に出るのもなんのその。
 口笛吹いて歩けるほどに、
 闇を恐れる気持ちを忘れていた。

 暗闇がどうしようもなく怖いものだって、
 暗闇に居れば心も引きずり込まれるって、
 暗闇の中でもがくだけ無駄だって、

 そんな事をすべて忘れて、

 暗闇を彷徨っているうちに
 すべてを諦めかけた。
 もうこのまま溶け込んでしまおうと、
 自分を喪失しかけた、その時

 やっと君に出会えた。

 真ん丸なお月さまを背に手を差し伸べて
 月の光が髪をすり抜けて天体のように輝かす、
 暗闇の中でたったひとつの光は 温かかった。

 暗い道の中、月明かり。
 温かな手、流れる髪。
 僕を引きつれて、
 君に連れられて、
 暗闇の中に居るのに心細くなかった。

 夜空を背にして微笑む君は
 何よりも明るかった。
 瞳の中に月が見えて、引き寄せられる。

 闇に堕ちる夜、僕の手は太陽のようだった。