映画/「連合艦隊司令長官 山本五十六」 | みやのすけの映画倉庫/『ゴジラVSコング』への道



1968年8月14日公開
東宝
監督:丸山誠治
特技監督:円谷英二
出演:三船敏郎、加山雄三、黒沢年男、酒井和歌子、司葉子

太平洋戦争中、連合艦隊司令長官として名をはせた山本五十六。
米内光政首相を支えて三国同盟に反対した海軍次官時代から、1943年にブーゲンビル島で戦死するまでを描く。

さて、東宝お得意の特撮パノラマ戦記ものです。
というわけで、まず特撮について書きますが、いくつかハイライトとなる戦いのうち、真珠湾攻撃とミッドウェイ海戦はすべて1960年公開の「太平洋の嵐」から流用されています。
新撮となるのは主ににガタルカナルの戦いと山本が戦死するブーゲンビル島上空の空戦。
ここは力が入っていて、特に合成カットの完成度は非常に高く、米軍の攻撃で炎上する駆逐艦(ミニチュア)に、消火のため甲板を走りまわる俳優を焼き込んであるのがすごい。
デジタル全盛の今でも、こういう面倒くさいことはしないでしょう。
しかしその効果、臨場感は絶大です。
また、ブーゲンビルのシーンでは山本の搭乗する一式陸攻のディテールやスケール感、重量感はなかなかのものです。




しかし、映画全体のイメージは平板。
タイトルロールの山本五十六の人間性に迫るなどということは全くなく、これは例えば戦時中の「加藤隼戦闘隊」などよりもはるかに後退した感すらあります。
1968年に山本五十六を軍神、完全無欠のヒーローとして扱う神経は理解できません。
また、三船敏郎の演技もまったく型にはまったものです。



しかし何ですな。
そもそも司令長官なんてのはおよそ映画向けの素材じゃありませんね。
何しろ人を動かすのが仕事で自分は動かないわけですから。
なので、作品は会議に次ぐ会議、その合間を特撮シーンがつなぐという感じ。
日本の軍人は会議議ばっかりやってるイメージですが、実際そんなものだったのかもしれません。

一番印象に残るのは、ソロモン海戦で、傷ついた少年兵(なんと子役時代の池田「シャア・アズナブル」秀一だ!)の乗るゼロ戦が力尽きて、ゆっくりと海に墜ちていくシーン。
夕陽をバックにしたこの美しくも哀しい名場面の一番の演技者が、物言わぬミニチュア飛行機であることは何とも皮肉なことです。

「軍神」山本五十六の戦死は、当時の国民に大きなショックを与えます。
しかし報道は各地で日本軍の勝利を伝えるのみ。
実際の戦況は悪化の一途をたどっていることを、多くの国民はまだ知りません。