映画/『最高殊勲夫人』 | みやのすけの映画倉庫/『ゴジラVSコング』への道
1959年2月公開
大映
監督:増村保造
出演:若尾文子、川口浩、船越英二、宮口精二

兄弟姉妹の二組が互いに結婚している三原家と野々宮家。
まだ独身の、三原家の三郎(川口浩)と野々宮家の杏子(若尾文子)は、自分たちだけは絶対に結婚しないことを誓い合うが…。
原作・源氏鶏太、脚本・白坂依志夫。

という粗筋だと、川口浩と若尾文子が最後に結婚してしまうのは分かりきったことなのですが、やはりそうなってしまう(笑)。

というわけで、やはり見所は明るくて溌剌として美しい若尾文子。
これはまあ一種のアイドル映画でしょう。
私としては、若尾文子とその父親役、宮口精二のキャッチボールのシーンが楽しかった。
だって日本映画ファンなら見たくないですか?
この二人のキャッチボール(笑)。
目下大学受験勉強中の弟と、川上が辞めた後の巨人の一塁手について論争するのが時代を感じさせます。

脇がまた面白いのですが、騒々しい作品の中、ひとりむっつりと気難しい顔をした宮口精二が渋いです。
娘とトンカツ屋でビールを飲むシーンで見せる穏やかな笑顔が良いですね。

私が驚いたのは社長船越英二のコメディ・リリーフぶりで、その動きと表情がまったく日本映画的でない。
薄衣一枚で挑発する浮気相手に、「うひょっ」とシビれる演技など、ヘタにやれば下品になってしまう所をギリギリで止めている。
こんなに達者な人だと今まで気付かなかった、不明を恥じるしかありませんな。

その他、川口浩の婚約者のぶっ飛んだ前衛芸術家ぶりなど、風刺もチラリ。
サラリーマン、ビジネスガール(死語。今で言うOL)が社内の色恋沙汰に夢中で(電話交換嬢が一番事情通なのが可笑しい)、後は飲んだり食べたり。
彼ら彼女らが、いつどんな仕事をしているのかさっぱりわからないのは、日本のサラリーマン映画の常です。

背景のビルを使ったデザイン的なタイトルバック(「北北西に針路をとれ」のソール・バスと同年)や、結婚写真の変顔に、当時の増村らしいモダンさが垣間見えます。

ロカビリー喫茶など、当時の流行も興味深い風俗喜劇。

楽しいです!


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