演劇/「キネマの天地」 | みやのすけの映画倉庫/『ゴジラVSコング』への道

2011/9/18紀伊國屋サザンシアターにて
作:井上ひさし
演出:栗山民也
出演:木場勝巳、麻美れい、三田和代、秋山菜津子、大和田美帆

1935年、松竹蒲田撮影所の4人のスター女優が築地東京劇場に集められる。
呼んだのは小倉虎吉郎監督(浅野和之)。
彼女たちは新作の超大作「諏訪峠」の打ち合わせだと思っていたが、監督は前年の舞台「豚草物語」を再演するという。

その場で稽古を始める監督に戸惑う女優たちだが、監督には思惑があった。
実は前年の公演で、監督の愛妻松井チエ子が舞台上で死んだのだが、監督はこれを他殺と疑い、「豚草物語」のリハーサルに名を借りて、真犯人を炙り出そうという計画。
偽刑事役に売れない大部屋役者、尾上竹之助(木場勝巳)まで仕込んで、物語の幕が開く…。

サスペンス仕立て、劇中の時間経過と上演時間がシンクロしていること、加えて1935年という時代を描きつつ、物語に戦争の影が全くないなど、井上戯曲としては異色の作品です。

4人のスター女優がそれぞれに張り合い、当てこする序盤から好調。
大スター麻美れいの貫禄、母ものスター三田和代のクサい(無論ワザとです)芝居、ヴァンプ型の秋山菜津子の色気、少女スター大和田美帆のカマトトぶり、四人四様に見せる「棘」が笑いを呼びます。

特に井上戯曲初登場の秋山菜津子の達者ぶりが目立ちます。
大人計画から新感線、シェイクスピアから井上ひさし、日本の演劇界を縦横無尽に駆ける振れ幅の大きさには驚きます。

そして、脇役っぽく出てきて実は主役という木場勝巳の素晴らしさビックリマーク
この人は何といっても口跡が良くて声が良い。
偽刑事の役はこの作品の大黒柱、彼がまずいと作品世界全体が壊れてしまいます。
この役も時にユーモラス、時にシリアスと振れ幅の大きな役。
しかも、観客を幻惑させなくてはならない。
木場勝巳は素早いシフトチェンジでフットワークも軽く見事でした。

娯楽色の強い作品ですが、役者そのものを描いた舞台なので、演技者に相当な力量が必要ですが、本当に申し分ない出来栄えでした。

また、作品には演技論、役者論といったサブテーマがあるのですが、そこはあまり突っ込まず、サラリと描いているのも好感が持てるところです。