映画/「怪盗と判官」 | みやのすけの映画倉庫/『ゴジラVSコング』への道
1955年12月8日公開
大映
監督:加戸敏
出演:市川雷蔵、勝新太郎

訳あって江戸を離れ、京へ上ることにした、後の北町奉行遠山金四郎(市川雷蔵)と鼠小僧次郎吉(勝新太郎)。
ひょんなことから有名な()弥次郎兵衛と喜多八に間違われたのを幸い、互いに氏素性は知らないが妙に気の合う二人が、弥次喜多を名乗って京まで旅を続ける。

鼠小僧に懸想する女泥棒の意地悪で、有り金を奪われた二人は食うために旅芸人の一座に厄介になります。
子役に「新入りはまず馬の足からだ」と言われてクサる雷蔵がケッサク。
実際に二人は馬の足を珍演しますが、ここはさすがで二人の芸達者ぶりが笑いを誘います。

また、一座の肺病病みの女役者お蔦(長谷川裕見子)が死ぬ間際に、幼い頃女郎屋に売られそうになった所を鼠小僧に助けられた、江戸でもし鼠小僧に会ったらそのことを生涯恩に感じていたと伝えてほしい、と二人に告げるシーン。
弥次郎兵衛(=鼠小僧)答えて「きっと伝える。けどこうも言ってやる。『てめえの善行なんて所詮はその場限りのもの、可哀想なお蔦ちゃんを結局救えなかったじゃないか』ってな。」
そこで喜多八(=金四郎)「いや、俺ならこう言うね『鼠小僧への恩は、つらい一生を送り続けたお蔦ちゃんの心にずっと灯り続けた明かりだった。けどそれが泥棒したお金でなければもっと嬉しかったろう』ってな」
お互いの正体に薄々気づいている二人の、情感溢れる台詞はさすが小国英雄ですね。

一座は北陸へ、弥次喜多は京へ。
別れながら勝新太郎が主題歌「お役者道中」を歌うシーンがいいですね音符
ミュージカルではありませんが、この作品はいいタイミングで歌が入るのが楽しいです。

実物の弥次喜多を益田喜頓と堺駿二がコメディ・リリーフとして演じるのですが、益田喜頓のボケと堺駿二のツッコミが絶妙です。

京についた金四郎と鼠小僧は、一年後に日本橋のたもとで会うことを約束して別れます。
そして一年後、二人は北町奉行遠山左衛門之丞と、義賊鼠小僧次郎吉として相まみえることに…。

明るく大らかなロードムービーで、意外な悪役、明るく温かいラストも良く、小国英雄の素晴らしい職人芸の光る脚本に加戸敏監督のリズミカルな演出もあり、楽しい作品でした。