あっ、白菜安い…!







そう思って、伸ばしかけた手を止める。






そうだ…

和ちゃん夕飯要らないって言ってたんだった…
今夜は遅くなるんだって。







お鍋にしようかなって思ったけど、今日は無理。


明日、明後日なら…?





うーん…







…買っちゃおう。

無理なら作り置き用にすればいいしっ。





と。

諸々を買ってスーパーを出た。

















和ちゃんは、今夜は飲み会があるとかで帰りが遅くなるみたい。

だから、夕飯は私だけで簡単に済ませて、お風呂に入って、プリン食べて、録り溜めていたドラマを一気観する。





毎日ずっと一緒にいても、肩を並べることもあれば、それぞれ違うことをして過ごすこともあって。


そんな日々に、私は和ちゃんの気配だけで安心していられて、癒されて、眠たくなって…










…だからか、今夜はちっとも眠たくならない。





ドラマは、現在5話を見終えたところ。

ずっと楽しみにしていたはずなのに。
ストーリーは面白いと思うのに。

どうしても気になってしまうのは、話の続きよりも時計の針…






和ちゃんまだかなぁ。






和「何時になるか分かんないから、先に寝てろよ。」

って言ってたなぁ。
もう寝ないとなぁ。







もう1話観てたら、和ちゃん帰って来るかな?
そんなに夜更かししてたら、怒られちゃうかな?







0:42 と、スマホの画面に表示されていた。

 


もう寝よう…








明日…じゃなくて今日は。


買ってきた白菜で、和ちゃんとお鍋にしよう。

そしてアイスも食べて、一緒にお布団に入って、お喋りしながら眠ろう。

そうしよう。







玄関の方に意識を傾けながら、ゆっくりと寝る支度をはじめる。






結局、おやすみのチュウはお預け。





「おやすみなさい…」


目を瞑る。

やっぱり和ちゃんのことが離れない。




…頭の中だけじゃ足りないよ…







ちょっと前まで、これが当たり前だったのに。

次に会える週末を待てていたのにな…





…和ちゃん、今頃何食べてるのかな。
飲みすぎちゃダメだよ?

和ちゃん…
















自分が眠っていたんだと気づいた時、既に部屋は明るくなっていた。

ふと目をやると、隣で丸まっている背中が、ゆっくりと上下している。






「…おかえり。」



そっと呟いた。

途端に大きなあくびが出て、私は枕に顔を埋める。

















和「…あ、起きた…?」



ピョンピョン跳ね上がっている髪に、掠れた声。






…ん?





わたし、寝てた……?







「…ん……」 



和「寝惚けてんなぁ。」







そっと髪に触れる感覚がして。





胸の真ん中のところが、じんわり暖かかった。





~続~