「俺とカズは、さっき話したとおり従兄弟なのね。同い年ってこともあって、子供ん頃とかはよく遊んでたの。」
松本さんは、カズの子供時代…いや、生まれてからを共に過ごしてきた人…
「カズには三つ年上の兄貴がいて、その人も一緒にね。ほら、これがその人の写真。」
と。
彼は徐にスマホを弄り、私に差し出した。
その画面には、スーツを着た男性が3人。
一人は松本さん、もう一人はカズ、そしてもう一人…
「この人って…」
本当に驚いた。
この人が、カズのお兄さん…?
「そ。君も何度か会ったことあるよね? 智兄さん。」
松本さんが、〝智兄さん〟と親しげに呼ぶその人は、私がパーティー会場で出会って、噴水を一緒に見たあの人。
大野さんが、カズの…!?
「この二人が兄弟…」
呆気に取られている私に、
松本さんは続ける。
「そう。つまりこの二人とも、俺の従兄弟。」
「そ、そんなことって…」
あまりの衝撃の事実に、言葉に詰まってしまう。
「びっくりした?」
「びっくりしますよ…」
だよね~って、また松本さんは笑いながらグラスに注ぐ。
まさか、ここ数ヵ月で出会ってきた彼らがみんな親戚で。
ましてやカズと大野さんが兄弟??
聞いてないよ~
でも、だからこそあれだけ声色や雰囲気まで似ていて、初対面でも話しやすかったんだと、妙に納得した。
ん? 兄弟なんだよね?
あれ、でも…
「あの、でもお名前が違ってますよね? カズは二宮さんで、お兄さんが大野…? あっ…!」
「フフッ…君って本当に面白い子だよね。今、〝カズの本名が大野なんじゃないか〟って思ったでしょ?」
す、鋭い…
「え、違うんですか?」
「違う、違うよ。名前は本当に二宮和也だよ。俺が保証する。」
なんだ、そっか…
じゃあ、どうして二人の兄弟は名前が違うの?
「その…ご家庭の事情とかなら、無理には聞かないんですけど…」
遠慮がちに聞くと、
「いいよ、全然。って、俺が言うのも変だけど。でも、まずそこから話さないと、君に説明できないからね。話すよ。」
松本さんはまるで、昔を懐かしむみたいに斜め上を見上げて。
「二人はね、本当に仲が良かったんだよ。子供ん時からずーっと。悪戯好きなカズと、何度仕掛けられても怒らない温厚な兄貴とで。でも…」
「でも?」
「あることを機に、それまでが嘘だったみたいに疎遠になってしまったんだ。」
「あること…?」
カズの口からは決して語られることのなかった事実が、
「事の発端は、俺たちがまだ学生の頃まで遡るんだけど…」
「はい…」
彼の口から、赤裸々に紐解かれていく ーー
~続~