カズ…
どうして…?
それからも、暇さえあれば電話を掛けてみたけれど、カズに繋がることはなく。
メッセージも一向に読まれることはなく。
一週間が過ぎた。
カズ、そんなに怒ってたのかな?
でも何に??
私、気付かないうちに何かしてたのかなぁ?
カズは一体何を隠してたの?
カズと交わした会話を振り返る。
ー「お待たせ、カズ。」
「待ちくたびれた。」
「ごめん。」
「まぁ、座んなさいよ。」
「うん。」
「いつものでいいね?」
「うん。」
「マスター。いつもの。」
そして、マスターがカクテルを作ってくれて。
ー「遅くない? せっかちなオマエが珍しい。」
「…ちょっとね。」
「何よ。どうせ急いで、躓いて転んでたんでしょ?」
「うっ…」
「図星。オマエね、前から言うけど分かり易すぎんの。ほら、そこ。」
「えっ…?」
「気付かなかった? 本当、せっかちな奴。」
「全然。…お喋りに夢中だったし…」
「喋るって?」
「あ…」
それから、名前も知らない、親切な彼のことを話して。
ー「でね、わざわざ連絡先書いてくれたの。いいのにね。そもそも私からぶつかったんだし…本当、優しい人。ね、カズ?」
「…ふーん。」
あ…
そうしたら、いきなり不機嫌な顔し出したんだ…
ー「ねぇ、聞いてた?」
「聞いてたよ。」
「いい人だと思わない? わざわざ知らない人に連絡先書いてくれるんだよ? 『何かあればここにどうぞ』って。」
「…じゃあ、絆創膏買って貰えば?」
そうだ…
あの人の話をした途端…
ー「ねぇ、怒ってる? 私が待たせたから?」
「…マスター。おかわりちょーだい。」
「もういいっ。」
「何ふて腐れてんだよ。…っておいっ。」
なんで気付かなかったんだろう?
あれ、でも…
なんで彼の話であんなに不機嫌になったの?
感情なんて顔に出すタイプじゃないカズが、どうして…
どうしたらいいんだろう?
どうしたらカズに…
「あ。」
私は、家を飛び出した。
華やぐ街。
今夜は金曜日。
カズと初めて出会った日と同じ…
カズと喧嘩別れしたあの日と同じ…
虚しいだけの、目映い街を駆けた。
金曜日の夜。
「いらっしゃいませ。」
やって来たのはホテルのバー。
ここにならいるかもしれない。
そんな、淡い期待に導かれて来たけど…
「マスター。カズ…彼は?」
「来ていませんよ。」
なんだ、そっか…
「あの、最近いつ来ました?」
「そうですね…貴女と喧嘩された日、ではないでしょうか。あの後、彼おひとりでだいぶ飲まれてましたね。それ以来いらしゃってませんよ。」
あの日以来、来てないの?
カズに会えるかもって思ってたのに…
「そんなぁ。じゃあ、どこか行きそうな場所とか知りませんか? 」
「そうですねぇ。…それは貴女の方がご存じなのでは?」
私の方がって…
よく考えたら、私、カズのこと何にも知らない。
そんな私に、カズの行きそうな場所なんて分かるワケ…
…あるかもしれない。
~続~