カズ…
どうして…?





それからも、暇さえあれば電話を掛けてみたけれど、カズに繋がることはなく。

メッセージも一向に読まれることはなく。


一週間が過ぎた。





カズ、そんなに怒ってたのかな?
でも何に??

私、気付かないうちに何かしてたのかなぁ?
カズは一体何を隠してたの?


カズと交わした会話を振り返る。





ー「お待たせ、カズ。

待ちくたびれた。


ごめん。

まぁ、座んなさいよ。


うん。

いつものでいいね?


うん。

マスター。いつもの。



そして、マスターがカクテルを作ってくれて。



ー「遅くない? せっかちなオマエが珍しい。

…ちょっとね。


何よ。どうせ急いで、躓いて転んでたんでしょ?

うっ…


図星。オマエね、前から言うけど分かり易すぎんの。ほら、そこ。

えっ…?


気付かなかった? 本当、せっかちな奴。

全然。…お喋りに夢中だったし…


喋るって?

あ…



それから、名前も知らない、親切な彼のことを話して。



ー「でね、わざわざ連絡先書いてくれたの。いいのにね。そもそも私からぶつかったんだし…本当、優しい人。ね、カズ?

…ふーん。



 
あ…

そうしたら、いきなり不機嫌な顔し出したんだ…



ー「ねぇ、聞いてた?

聞いてたよ。


いい人だと思わない? わざわざ知らない人に連絡先書いてくれるんだよ? 『何かあればここにどうぞ』って。

…じゃあ、絆創膏買って貰えば?



そうだ…
あの人の話をした途端…



ー「ねぇ、怒ってる? 私が待たせたから?

…マスター。おかわりちょーだい。


もういいっ。

何ふて腐れてんだよ。…っておいっ。



なんで気付かなかったんだろう?

あれ、でも…

なんで彼の話であんなに不機嫌になったの?

感情なんて顔に出すタイプじゃないカズが、どうして…





どうしたらいいんだろう?
どうしたらカズに…





「あ。」





私は、家を飛び出した。

華やぐ街。
今夜は金曜日。

カズと初めて出会った日と同じ…
カズと喧嘩別れしたあの日と同じ…



虚しいだけの、目映い街を駆けた。



金曜日の夜。








「いらっしゃいませ。」



やって来たのはホテルのバー。

ここにならいるかもしれない。
そんな、淡い期待に導かれて来たけど…



「マスター。カズ…彼は?」

「来ていませんよ。」



なんだ、そっか…




「あの、最近いつ来ました?」

「そうですね…貴女と喧嘩された日、ではないでしょうか。あの後、彼おひとりでだいぶ飲まれてましたね。それ以来いらしゃってませんよ。」



あの日以来、来てないの?

カズに会えるかもって思ってたのに…




「そんなぁ。じゃあ、どこか行きそうな場所とか知りませんか? 」

「そうですねぇ。…それは貴女の方がご存じなのでは?」



私の方がって…


よく考えたら、私、カズのこと何にも知らない。

そんな私に、カズの行きそうな場所なんて分かるワケ…





…あるかもしれない。


~続~