芸人の徳永と、徳永が弟子を申し出る先輩芸人の神谷さんとの交流を描いた、可笑しくてちょっぴり哀しいお話。
純文学と呼ばれる小説を久しぶりに読んだせいか、最初入りづらかったけど、関西弁のテンポ良い会話を中心に、どんどん2人の世界に引き込まれる。油断してたら、後半、涙があふれた。
神谷さんのセリフより拝借。
「徳永、俺が言うたことが現実的じゃなかったら、いつも、お前は自分の想像力で補って成立させようとするやろ。それは、お前の才能でもあるんやけど、それやとファンタジーになってもうて、綺麗になり過ぎてまうねん。俺が変なこと言うても、お前は、それを変なことやと思うな。全て現実やねん。楓に色を塗るのは、片方の靴下に穴が開いたままの、前歯が一本欠けたおっちゃんや。娘が吹奏楽の強い私立に行きたい言うから、汗水垂らして働いてるけど、娘からは臭いと毛嫌いされてるおっちゃんやねん」
胸をじぃぃんと突く好きなセリフです。
ちょっと、いやだいぶ違うんだけども。
例えば、悲しすぎる現実を、でも不幸中の幸いだよね、とか、でも良かったよね、とか。
悲しすぎる現実から目をそらすように、まぁるく言葉でおさめようとすること、あるよね。
綺麗に美談にもなり得るかもしれないけど、事実が抽象化したり一般化することで、かえって薄っぺらくして、時には渦中の人を傷つけることもある。
おさまりの良い言葉にするのを急がず、目の前の現実を、じっとみつめる。悲しい痛ましい現実と向き合う。
それが、ものごとに真摯に向き合うことだと知って。そういうタイミングで、神谷さんのセリフに出会い、ハッとして。心の琴線に触れた瞬間。
糸井重里さんとのほぼ日対談で、またそのうち書きたくなると思います、と言っていた又吉さん。
次回作も出たら、きっと読みます。
太宰ファンで有名な又吉さん。
太宰治の作品も、これを機に読み直してみような。