横浜から実家まで1号線に沿って
自転車で帰ったことがある。

別に競輪の選手でもなく、
サイクリング部でもなく、
たまたま、レーサータイプの
自転車を譲ってもらったので
行ってみるかと、僕、お得意
の行き当たりばったり行動だった。

箱根の山も休み休み越えた。

自転車おじさんと出会って自慢話された。
昔話をするだけして、じゃあ、がんばってな。
と去っていかれた。

静岡はなかなか終わらなかった。
風との戦いだった。ぜんぜん進まなかった。
一直線の道を無心に
回転運動。回転運動。と言いながらこいだ。

たまにすれ違う自転車野郎が
手を上げて挨拶してくれた。
レーサー自転車を乗せた車が
クラクションを鳴らしてくれた。
自転車文化って温かいね。と思った。

三日目かけて実家に着いた。

自転車で来た僕にお袋は驚いていたが、
「やぁー。えらかったねー。」
まるで、小学生が近所に
お使いに行ってきたような扱いをされた。
「そうか。そうか。えらかったねー。」

まあ、大したことではないけれど、
それにしても、力が抜けた。
ねぎらい方にがっくりきた。

黙々としたストイックな回転運動の
間に感じた辛さや、すがすがしさや、
様々な気持ち的なものなど、
僕の凡人的偉業を説明したところで
空しいだけだろう。

わからないだろうなあ。お袋には。
はぁ~。そうだね。と、
ふてくされました。

この距離が母と息子らしく、
今思えば、そう思う。