バラードB氏は恋多き男だった。
反応のよい女の子にすぐ恋をする。
「今度、キャンプに行かない?」
とあいつが誘ったら、
「行く行く。バーベキューなんかいいよね。」
なんて、迷わず、即答する女の子がいたら、
それはバラードB氏の好み。
もう恋に落ちていた。
2,3度アウトドアなイベントをこなした後、
僕のところに電話がかかってきて、
「飲もうぜ。」である。
わかっているさ。いつものことだった。
そのころは寮生活だった。
ハリウッド映画に出てくる日本人みたいな
冴えない容姿なんだが、あいつの部屋は、
40度以上のヘビーなバーボンだらけだった。
それでチビチビやりながら、
バラードB氏はさみしげに語り出す。
まさにバラードを歌うように。
「俺じゃだめだってか?」
「俺のこと好きじゃないんだって。」
「○○○○○○○のに、×××××い。
△△△△△△△△な。」
自分を攻め立てまくる。とても切ない。
僕はうんうんと聞いているだけだった。
ひとしきりのバラードを奏でたときには
バーボン1本がなくなりかけている。
バラードB氏もそろそろ、
いつものようにおかしくなり、そして、
トイレに駆け込み、ゲロを吐く。
「うぉーーーーぇーーーーー。」
最高のバラードだった。
あいつのバラードのサビは涙なくしては聞けない。
悲しみと切なさが凝縮されている。
女性には当然のこと、モテル奴にもわかるまい。
そんな男のバラードさ。
「うぉーーーーぇーーーーー。」
「はっ、はっ、はっ、はっ、はっ。。。」
冷めた僕にとってはいつも、
人を好きになるってのはなあ。
人を好きになるってのはなあ。
と迫力をもって、付きつけてくるメロディーだった。
単なる飲みすぎなんだが、
あいつのバラードは激しくすごかった。
「うぉ、うぉ、うぉ、
うぉーーーーぇーーーーー。」
あのバラードが懐かしい。