私が出かけるたびに

西の窓辺に座って

待っていてくれているのが常だった

帰ってくる私の姿を見つけると

小さくニャッニャっと啼き

「ナナ!」と私が小さく手を振って答えると

爆発する嬉しさを表現するように窓枠で爪を研いだ

 

その姿が消えた

飾るべき絵画を失った額縁のように窓は虚ろだ

もうすぐ緑のカーテンが窓を覆ってくれる

この夏の間に寂しさは薄まるだろうか

 

あなたを信じることにしたから

そう伝えにきた日の力強い目を

エメラルド色の澄み切った瞳を

家の中に踏み入れた最初の一歩のその白い前足を

柔らかな毛並みを

表情豊かな尻尾を

 

ナナ

不治の病だったのだ

いくらそう思うおうとしても

悲しみも後悔も消え去らないような気がする

けれども務めて

愉しかった思い出を拾い上げては

毎朝窓辺に立つよ