先週の土曜日のことですが
いつものように普段通りに
助勤に行っております神社に
出社致しまして、
何気なくふっと机の上を見ますと
9時半・身体健全・〇〇(お名前の名字)
というメモが・…
これって、つまり
本日(あと十数分)「身体健全」の願意で
〇〇さんという方の
御祈祷の予約が入ってる
って意味です。
「助勤」というのは
宮司さんなどの神職さんが在籍はされているのですが
諸事情で不在で
或いは人手が足らなかったりで
非常勤もしくは常勤で
祭祀等及び社務のご奉仕に就く
いわば助っ人の神職の事
或いはその職務のことを言います。
で、私が助勤に入っております神社では
時折出社してみて初めて分かる
このような突発的な
社頭での御祈祷依頼の予約が入っていて
慌てることがあります。
(誰が電話を受けて、
なぜこんなコミュニケーション不足が生じるのかの事情は
ここでは省略させていただきますが…)
当然この日も神職は私しかおりませんので
大急ぎで装束を着替え
本殿の鍵を開け
撤饌を用意し
玉串を準備し
無病息災・所願成就・家内安全の三つの祝詞を
とりあえず探し出して
ハアはぁ言いながら
スタンバイしておりました
やがてそうこうするうちに
ご予約された〇〇様ご家族、
つまりご両親と15~6歳くらいのお子様の3人連れ様が
来られました
ご依頼の主役はこのお子様なのですが
願意の詳細を
この青少年にお聞きしても今一つ要領を得ません
お母様にお訊ねしますと
とにかく
『心身共に健全に過ごさせて欲しい…』
御祈祷申込書に
住所お名前等をご記入いただいてる間に
お話して察したことは
つまり、
反抗期の息子を何とかしてほしい
どうもそういうことのようでした
この日、朝、とにかく思い立って
いやがる息子をなだめすかして
ご両親がほぼ無理やり神社に連れてきた・・・
なんかそんな感じでした
息子さん、ふてくされてますし
ニコッともせず無愛想ですし、
しぶしぶって感じ、丸出しでしたもの
『それでは、御本殿におあがりの上
しばらくお待ちいただけますでしょうか
すぐに参りますので』
そう言ってこのご家族を本殿に上がっていただいてから
さあ、大変
祝詞の文言
両親の愛情がこの息子さんに伝わりますように
両親に感謝、神恩感謝の気持ちが
ほんの少しでも
この反抗期の息子さんの心の中に芽生えてくれれば・…
そんな思いと願いを込めて
家内安全祈願の祝詞の文面を
大幅に手直ししました
お湯を注いで三分
カップ麺が出来上がるまでの三分間は
長く感じますよね
だからお待たせするのはせいぜい二分まで
この二分の間に
願意に沿った内容に
祝詞の文言を修正作文するのは
至難の業です
必死です
が、
御祈祷御依頼者の願いや思いを
感謝と共に神様にお伝えしてお見守り下さいますようにと
ご神前で奏上することが
勤めですし、その務めを果たすことが本務ですから
なんとしてでも、やります!
やりますが、
が、できる事なら
余裕を持って、例え二~三日前でもいいですから
ご予約いただければ嬉しいです
七五三や初宮や安産祈願や商売繁盛などの
いわば定番の御祈祷ならご予約なしでも
安心してお勤めさせていただきますが
ちょとイレギュラーな願意の場合は
その内容に沿った祝詞を新たに作文して
その都度祝詞用紙に墨書しますので
是非ご予約をお願いいたします
それはともかく、
このご家族の
身体健全というよりもむしろ
心身健全を乞い祈み願う(こいのみねがう)思いを
精一杯心を込めて御奉仕申し上げました
御祈願終わって
今ほど奏上した祝詞の内容と意味について
少しくご説明申し上げながらご挨拶するのですが、
なんと言う事でしょう~!!
始めるまで
あんなにふくれっ面のふてくされ顔だった
青年の顔が穏やかで
更に
彼の口から出てきた言葉が
涙が出るほど嬉しかったのです
彼は、
『ありがとうございました』
そう言ってくれたのです。
神社の鳥居をくぐって
ほんの30~40分前に
来てくれた、その
同じ彼とは思えぬほど、うって変わって
爽やかな笑顔で
感謝の言葉と共に帰って行かれる
ご家族の後ろ姿を見送りながら
一番幸せなのは
実は、
こうして少しでもお役に立てさせていただける
自分自身なのではないかな
なんてことを考えておりました…
このお歌は
明治天皇の御製です